日本でも新型コロナウイルスの影響は甚大ですが、現時点でヨーロッパでは、それ以上に被害を受けています。
感染者や死者の数が多いことはもちろん、都市封鎖の影響で、経済にも相当なダメージが予想されます。
そんな中、スペインでは、『ベーシックインカム』を導入するという報道がされています。

【Forbes JAPAN 2020.4.8】
新型コロナウイルスの感染者数が世界2位に達したスペインは、経済の立て直しに向け、可能な限り迅速に「ユニバーサル・ベーシック・インカム(最低所得保障制度)」制度を導入することを決定した。4月5日、経済大臣のナディア・カルビニョが発表した新たなスキームは、終了期限を設けずに導入されることになる。カルビニョは現地メディアの取材に対し、感染拡大の脅威が去った後も、ユニバーサル・ベーシック・インカム制度は継続すると述べた。
Forbes JAPAN
はたして、ベーシックインカムとはどういったものなのでしょうか。
日本にもベーシックインカム導入を考えている人達はいるのかなど、確認してみたいと思います。
ベーシックインカムとは
ベーシックインカムとは、上の記事内に“最低所得保障制度”と書いてあったように、「一定額の生活費として必要とされるお金を定期的に給付する」制度のことです。
スイスでは2016年6月に、ベーシックインカム導入の可否をめぐって国民投票が行われました。
結果は、7割以上の国民が反対して否決されています。
ベーシックインカムのメリットは、最低限の所得保障による安心感や、新しいビジネスに挑戦しやすくなる環境がえられること、また所得格差の是正などがあげられます。
その反面、人によっては仕事への意欲を欠くようになり、怠け者を生み出し、経済全体の停滞につながってしまうと考えられます。
また、重要視すべきこととして、ベーシックインカムの財源をどうするかという、大きな問題もあります。
今回の新型コロナウイルスの影響で、ベーシックインカムの導入を発表したスペインはまさしく、多くの失業者がでる状況で、当面の生活が維持できることや、将来に対する安心感を国民に持ってもらうために、導入という発表をしたのかと思います。
実験や導入した国はある?
このベーシックインカム制度を既に導入した国はあるのでしょうか。
現時点で導入した国はありませんが、実験的にベーシックインカム制度を実施した国はあります。
フィンランド
フィンランドでは、2年間・2000人(失業者)という限定で、ベーシックインカム制度が実験的におこなわれました。
期間は、2017年1月から2018年12月で、月額560ユーロ(約7万円)が支払われることになりました。
もう少し詳しく内容をみてみると、2000人は、失業手当をもらっている人の中から選ばれています。
ベーシックインカムで支払われる金額月額560ユーロは、失業手当の月額とほぼ一緒の金額です。
実験をするうえで比較したのは、ベーシックインカム受給者と、失業手当を現在も支給されている人達とでした。
通常、失業手当をもらうには、求職をしていることが条件になります。
双方の働いた日数や稼いだ額には、大きな違いは出ませんでした。
数値的なものの違いはあまりなかったベーシックインカム制度ですが、健康やストレス、幸福感などを確認したアンケートで比較すると、受給者の方が10%近く良い結果となっています。
カナダ・オンタリオ州
カナダのオンタリオ州でもおこなわれています。

カナダには10の州がありますが、その中でオンタリオ州は最も人口が多く、カナダの政治経済中心の州です。
ベーシックインカム導入実験は、2017年7月からスタートし、3年間おこなわれる予定でした。
対象は約4000人、単身者であれば年間最低1万7000カナダドル(約1万3000米ドル ※現在の1ドル≒108円)を、夫婦2人世帯であれば年間最低2万4000カナダドルを支給するというものでした。
ところが政権が自由党から保守党に代わることで、プログラムが中止され、2019年3月で支給を止めてしまいました。
理由は、費用がかかりすぎること、実験が住民に対する適切な解決策にはならないということでした。
3年を予定していた参加者にとっては、腹立たしい限りでしょう。
2つの国の事例は、数千人単位の実施です。
ベーシックインカム制度を、いざ国家単位でおこなうとなると、相当の準備と長期展望が必要になります。
今回のような緊急事態にでもならない限り、ベーシックインカム制度を導入しようなどとは、スペインでも考えなかったでしょう。
日本での導入は?
日本でも政策として、ベーシックインカムを導入すべきと主張する人達がいます。
ただし、それはあくまで限定的なものです。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、高齢者向けベーシックインカム(最低保証年金・給付)を提案しています。
私の考える、どんな人にも最低7万円給付する全額税財源の最低保障年金(高齢者向けベーシックインカム)を導入する場合、年収260万円からクローバックを開始し、年収690万円で給付を止める場合、2035年で今より消費税換算で0.3%分の追加財源が必要です。(これに現在の国庫負担の増加分0.3%が必要。) https://t.co/03b34JWVna
— 玉木雄一郎 (@tamakiyuichiro) 2019年6月8日
日本維新の会でも『維新八策』の中に、“ベーシックインカム(最低生活保障)的な考え方を導入” という文言があります。
いずれにしても、ベーシックインカムを、限定的な制度として組み込んでいくという考えのようです。
ちなみに、もし日本ですべての成人(20歳以上)に、フィンランドの実験並みに月額7万円を支給すると、年間80兆円以上の財源が必要になります。
ここまでの実験は、ちょっと壮大過ぎますね。
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