文部科学省が進める道徳の教科化で何が変わる いつから始まるのか?

社会問題(課題)

以前から議論されていた道徳の(特別の)教科化が始まります。

開始時期は、小学校が2018年度から、中学校が2019年度からです。

「なぜ今、道徳の教科化?」という意見もありますが、一つの大きな理由は、“ いじめ問題 ” です。

友達の心の痛みを感じとれる人間になれること、人への差別や見下しをしない人に成長することなど、道徳をもっと学ぶことで、身につけてほしい内容があるからです。

ただ、道徳による子供の成長で、いじめをなくすという取組みだけでは、十分とはいえません。

なかなかいじめの存在を認めようとしない学校の体質にも問題があります。

更に、多忙を極める教員が、児童や生徒一人一人と向き合う時間をしっかり取れないという現実もあるので、学校の改革も同時並行で行っていかないといけません。

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道徳教育の実情

現在の小・中学校では、年間35単位時間の道徳教育が行われていますが、実際は、学校や先生によって、指導内容や指導方法に差があるといわれています。

何人かの中学生に確認してみても、学校の様々な行事があると、道徳の時間がそれにあてられていたといいます。

また、文部科学省が作成した教材「私たちの道徳」は、学年の最初に配られたけれども、結局その本で授業をする機会がなかったそうです。

私が聞いて確認したことだけですべては判断できませんが、これも一つの現実だと考えれば、政治家や文部科学省がそのような学校現場の実状をうれい、道徳の教科化をすすめたのも頷けます。

道徳が教科化されると、他の教科同様に、検定教科書が導入されます。

そして、教員は年間指導計画を作成することになり、学習状況や道徳性に係る成長の様子を把握し、児童・生徒の評価を下します。

ただし、数値などによる評価は行われません。

教科化への意識調査

道徳の教科化に対しての意識調査をみると、とても興味深い結果が出ています

それは何かというと、一般の世論と教員との間に、道徳教科化に対する賛否の数値が明らかに違っているのです。

Yahooが行った意識調査(2013.3.26~4.5)、「道徳の教科化、どう思う?」では、104,770票中、賛成が68.3%(71,515票)で、反対が25.9%(27,111票)という結果でした。

読売新聞の記事でも、

【YOMIURI ONLINE 2013.4.18】

読売新聞社は「教育」に関する全国世論調査(3月30、31日、面接方式)を実施した。政府が検討している「道徳」の教科化については、「賛成」が84%に達した。賛成の理由は「他人を思いやる心が育つ」が52%で最も多かった。反対する人が10% ~ 。

というように、70~80%前後の人が教科化に賛成しています。

では、教員はどうか?

北海道教育大学や愛知教育大学がおこなった『HATOプロジェクト』2015年の調査があります。

道徳の教科化への賛否は、賛成+どちらかと言えば賛成が小学校教員で18.8%(中学校教員21.3%)、反対+どちらかと言えば反対が小学校教員で78.9%(中学校教員75.9%)という結果でした。

<教員の仕事と意識に関する調査>

まさに正反対の結果になっています。

このような結果に対して、玉川大学の山口教授は、

「国語や社会などの教科内でも道徳教育を行えますし、さらには朝の会、帰りの会、休み時間、給食の時間、掃除の時間、運動会、修学旅行等々あらゆる学校教育活動の中で道徳教育を行うことができます。

教育関係者は、こうした現行制度を理解しているが故に、道徳をわざわざ教科化しなくても現状で事足りるという意識につながったと思われます」

と述べています。

果たしてそうなのでしょうか?

“いつでもできる” は反面、次の機会で大丈夫という気になりやすく、後回しにしてしまいます。

それは道徳教育の事に限らず、『後回しで、結局しない』は、誰でも経験している事でしょう。

道徳教育を避ける理由

2011年に東京学芸大学の永田繁雄教授が、教員を対象に行った道徳の時間の実施実態調査があり、「十分に行われていないと思う」が、小学校で66.2%、中学校で74.8%という高さでした。

その理由聞くと、

「忙しくて他の指導に時間を取られがち」

「指導の仕方が難しい」

「どのように役立っているのかわからない」

という答えがとても多いわけです。

この結果から教員の道徳教科化反対の主な理由は、“できれば避けて通りたい” という本音があるのではないかと、考えられます。

また、あくまで少数ではあるでしょうが、道徳=価値観の押しつけ、道徳=修身=戦前・軍国主義、といったイメージに結びつけて、教科化の反対をしている人もいるはずです。

   <道徳教育の改善方策について 永田繁雄>

道徳教育の見本

先日、『先生、日本ってすごいね』という本を読みました。

著者は、公立中学校教諭の服部剛氏です。

授業でどんな説明や資料を提供したのか、生徒との問答の様子や、生徒の感想などが具体的に書かれていて、とてもわかり易い内容です。

この本は、担当した生徒に行った実際の授業内容をまとめたものです。主に、偉人の話が中心にまとめられています。

  『道徳の教材として参考にしてほしい書籍

読みながら私自身が感動してしまいました。

たぶん子供達も同様に胸を熱くして、時には涙ぐんでいただろうなぁと想像できます。

こういった授業を道徳の時間におこなってくれることを、多くの親が望むであろうと思いました。

こんな資料を参考にすれば、先ほどの「(道徳が)どのように役立っているのかわからない」といった意見は少なくなっていくかと思います。

文部科学省では、

道徳教育の一番のねらいは「人としてどうあるべきか。自分はどう生きていくべきか。」ということを自分自身で考え、実際に行動していけるようにすることにあります。

と言っています。

道徳教育はまったく必要ないと考える人は少数派だと思いますので、あまり堅く考えずに、教科化のスタートをきって、少しずつ修正をかけていけばいいのではないでしょうか。

ただし、繰り返しになりますが、多忙を極める先生が、充分に児童・生徒達と向き合える時間、道徳教材の開発・研究を行える時間を確保できるよう、教育現場の改革をおこなっていってほしいと思います。


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コメント

  1. ぼちぼち工房  より:

    ・端的に言えば、あなたの意見に賛成です。
     確かに現場では、道徳の時間を十分に生かしていくいない。また、十分に指導できない教員の少なくはない。が、これ以上に数値化できない教科を増やすと、もっともっと教師にゆとりがなく、他の教科の教材研究がおろそかになるし、仕事量も増え、過労が重なっていくであろう。また、子供たちと接する時間がさらに薄くなり、教育の低下が心配になる。教師自身も道徳的な素養を鍛え、全教科の中で感化していくことが何よりもの得策に思える。

    • kakusureba より:

      ぼちぼち工房さん、コメントありがとうございます。
      教職関連のお仕事をされているご様子、
      コメントから現場の実情が伝わってきます。
      学校現場の改革なく、教員の方だけの負担を増やしていくことは、
      避けなければならないと私も思います。
      家庭教育の不足分を学校に持ち込む事の成否なども含めて、
      課題山積であると感じます。

  2. まっくす より:

    脳教育を日本ももっと教育関係者が研究なさってはどうでしょうか?

    道徳教育の一番のねらいは「人としてどうあるべきか。自分はどう生きていくべきか。」ということを自分自身で考え、実際に行動していけるようにすることにあります。

    と言っています。

    とありますが。

    海外の公立学校で採用されているところもあり、
    この本文中のねらいに
    則していると思われますが

    • kakusureba より:

      「脳教育」のご指摘ありがとうございます。
      その分野の知見を持ち合わせていませんので、今後機会があれば記事にしたいと思います。

  3. 佐々木庄太郎 より:

    「正しい日本の歴史」を教育するためにも、社会科等と連動して「我が国」を誇り愛する態度を育む道徳教育を胸を張って躊躇うことなく実践していければと思います。

    • kakusureba より:

      ご訪問ありがとうございます。
      教職関係の方でしょうか?
      未来を担う子供達への道徳教育、宜しくお願い致します。

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