子供は親の姿、言動を見て育ちます。これは万国共通のことです。
親が家庭でどんな発言や考え方をしているか、子供はしっかり見ていますし、確実にその影響を受けます。
子供への教育で、特に何かを叱るときに、「この言い方、自分の父親(母親)に似ているな」と思った時はないでしょうか?
私は、あります。
それは意識したわけでなく、まさに無意識の中から出てくるのです。
そう考えれば、DVを見せられて育った子供が、その影響を受けないわけがあるでしょうか。
今回は、DVを見せられた子供達に、どんな影響がでるのか考えてみます。
DV体験
DV体験のある女性が吐露しています。
「あなたが我慢すればいいという問題では、全くありません」
彼女には3人の子供がいます。すでにDV夫とは別れていますが、長男と次男(11歳と7歳)にDV夫の影響がでています。
長男はまるでDV夫のように、次男に接します。大声で威圧したり、時には暴力をふるったり。
次男は、自分に都合が悪いと殻に閉じこもり、見ない聞かないを決め込みます。これなどは小さいながらに、自分の身を護るために覚えた悲しい習性でしょう。
そして、長男次男とも、「お父さんに怒られたのは、自分が悪いからだ」と思っていたそうです。
これは創作でしょうか?
確証はありませんが、私は事実だと思います。(参考:「脱!DV男・DV夫」)
DV 子供への影響
子供が親の言動に影響されて育つのを、否定する人はいないでしょう。DV親のふるまいを見て、影響を受けない子供がいるわけがありません。
DV被害の母親が言っているように、「自分が我慢すればいい」と言う問題ではなくなっているのです。
暴力で問題を解決しようとする親が育てた子は、そのまま育てば多くの場合、暴力をふるって生きていきます。
それが問題解決のための手段だと、脳裏に染み込んでしまうのです。
アメリカの大学で、DVを目撃した幼児の追跡調査をおこなったところ、その幼児達が、普通の幼児達と比較して、成長と共により攻撃的な行動を示すようになりました。
幼児でもそうなのですから、小学生以上の子供が、母親を殴る父親の姿をいつも見ていたら、どれだけのトラウマが残るでしょうか。
DVの影響を受けて大人に
男の子は「女は自分の思い通りにならなければ、殴ってもいい」、女の子は「女性は、男に気をつかって生きるもの」、そんな間違った意識や学習を、家庭でさせられているようなものです。
DVにおいては、子供達は完全に被害者です。DVをおこなっている親は、その事を理解できません。
『児童虐待の防止等に関する法律』では、DVを目撃させることも “ 児童虐待 ” であると定義しています。
子供達の未来のことを考えて、DV被害者の親は、解決の道を見出してほしいと思います。
そして早く、傷ついた子供達の心に、手当て(カウンセリング)をしてあげて下さい。
暴力の形態
ドメスティック・バイオレンス=DVを語る上で、暴力(バイオレンス)の形態について考える必要があります。
内閣府男女共同参画局では、暴力の形態を三つに分けて説明しています。
○身体的なもの
○精神的なもの
○性的なもの
【身体的なもの】
これはわかりやすいですね。 例えば、殴る蹴る、髪を引っ張る、首を絞める、物をなげつけるなどです。
【精神的なもの】
これは手は出さないけれども、恫喝したり、心ない言動で、相手を傷つけることです。人前でバカにしたり、命令口調でものを言うのも該当するようです。
人との付き合いを厳しく制限したり、何を言っても無視、生活費を渡さないなども精神的DVに入ります。ただこの辺は、判定基準が難しいですね。
【性的なもの】
夫婦といえども嫌がっている相手に、性行為を強要することはこれに当たります。 中絶の強要や避妊への不協力さも入ります。
この三つの中で、判定を下すのが一番難しいのは、繰り返しになりますが、精神的DVかと思います。
私からすると、通常は身体的DVがベースにあって、更に精神的DVを行うというイメージです。
精神的DVには、感情にまかせておこなうというより、根底に侮蔑や憎しみに近いような心の闇を感じます。
被害者の劣等感
以前の記事で、DV加害者は、劣等感が強いと書きました。
『DV男がDVをする原因や特徴(心理)は何?』
その劣等感は、自分よりも下の者(DV被害者)の存在を確認することで、DV加害者が一時の自己満足につなげている気がします。
ちょっと話がふくらみますが、この劣等感というキーワードは、DV加害者だけでなくDV被害者にも当てはまるという論者もいます。
どういうことかというと、DV被害者はDV加害者に対して、反抗したり早めに逃げ出すなど、初期の頃いくらでも対応することが出来るというのです。
にもかかわらず、なぜそうしないのか?
それは、「この人に捨てられたら、自分は生きていけない」と思ってしまっているからです。実は、この感情が『劣等感』なのです。
DVの被害者は、相手から暴力を受ける以上に、「自分なんか」という自虐的な思いがあるので、暴力への耐性ができているといいます。
これは、すべてのDV被害者に当てはまるものではないでしょうけれど、ある一面を言い当てていると思います。
肉体的ダメージは致命傷でないかぎり、何ヵ月かで治癒していきます。
でも精神的DVによるダメージは、いつまでも自らを苦しめ、簡単にそのトラウマから脱することができません。
どちらにしても、DVをし続ける加害者、DVを受け続ける被害者、不幸の関係以外の何ものでもありません。
一人で考え込まずに、公的な機関へまず相談をしてみてほしいです。
【関連記事】⇒『DV防止法制定後の法改正』
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