過去に安楽死させられていたコアラが森林火災で激減 コアラとユーカリについて調べてみる

コアラ② 世間の話題・雑記

オーストラリアの森林火災が深刻です。

オーストラリア政府はこの森林火災の影響で、113種の動物が壊滅的なダメージを受けたと発表しています。

その中でも、写真と共に伝えられるコアラ激減のニュースは、愛くるしい姿と相まって、人々の心に悲しみを芽生えさせています。

【SankeiBiz 2020.1.24】
オーストラリアで森林火災の被害が拡大し、昨年から20人超が亡くなったほか、数万匹のコアラが焼死したとみられている。

コアラは2016年現在で同国に33万匹が生息しているとの推計があるが、10万匹を切っているとみる保護団体もある。繁殖ペースは1年半から2年に1匹程度で、個体数の回復が危ぶまれる。

SankeiBiz

今回激減が伝えられるコアラですが、数年前までは、過剰な繁殖をおさえるために、安楽死させられていたことを知っていますか?

およそ5年前の状況を確認してみましょう。

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コアラを安楽死

オーストラリア・ビクトリア州政府が、700頭のコアラを安楽死させたという報道です。

【琉球新報 2015.3.4】
オーストラリア南東部ビクトリア州で2013~14年に、野生のコアラの数が生息域に対して過剰となり、一部が飢餓状態に陥ったため、数を減らす目的で約700匹がひそかに安楽死させられていたことが4日、分かった。オーストラリアのメディアが一斉に報じた。

琉球新報

日本人の感想は主に、二つの意見に集約されています。

一つは、「かわいそう、どうにかできないのか?」というもの。

もう一つは、「コアラは(殺して)よくて、クジラはダメというのはおかしい」というダブルスタンダードを指摘する意見です。

オーストラリアは、反捕鯨の急先鋒で、エコテロリストと呼ばれる『シーシェパード』の寄港地もタスマニア島に存在します。

そのため、後者のような意見があるのです。

コアラの生態

コアラといえば、愛くるしい顔と体型がまず目に浮かびます。

動物園でコアラを見た人は知っていると思いますが、行ってみると結構寝ている事が多いです。

それもそのはず、コアラが寝たり休んだりする時間は、一日のうち18~20時間もあります。

コアラは、基本的に木の上で生活するので、寝る時ももちろん木の上です。

たまに木から木への移動の際に地上に降りますが、この時は危険が伴います。
ディンゴ(≒野生の犬)やキツネに襲われるからです。

英国統治とコアラ

オーストラリアの東部と南東部に生息するコアラは、ヨーロッパ人の入植以降、1800年代後半から徐々にその頭数を減らしていきました。

英国の植民地となったオーストラリアでは、入植者達がコアラを捕獲し、毛皮をヨーロッパに持っていき、販売するようになったからです。

その後も、土地の開発で生息地である森林が分断されたり、乱獲が行われることで、益々コアラは個体数が減っていきました。

なぜ安楽死?

では、なぜ減少傾向にあるコアラを安楽死させなければならないのでしょうか?

これは、全体としては減少しているコアラですが、ある地域では逆に増えすぎているという結果からです。

例えばビクトリア州西部の沿岸の地域では、1ha当たり1頭以下が適切とされるコアラが、10倍以上の11頭まで増加してしまいました。

コアラが増加した結果、食料であるユーカリが足りず、飢えから衰弱してしまうコアラが増えていきました。それでやむを得ず、弱っているコアラを安楽死させるという手法が、とられたわけです。

人間のエゴがコアラに影響

この原因は何なのかと考えると、森林の減少や環境破壊を生み出す、人間社会のあり方に問題があるような気がします。

コアラの生息地が狭まり、コアラ生存地への人間による過度の保護が行われれば、その地域のコアラは増えていくでしょう。

ところが今度は上述のように、コアラが増え過ぎて、ユーカリが不足してしまうという、ジレンマに陥ります。

では、増えすぎたコアラを、他の地域へ移住させることはできないのでしょうか?

コアラとユーカリ

このことを考える時に、コアラの主食のユーカリが関係してきます。

ユーカリには600種以上の種類があり、変種も含めると更にその数は多くなります。

その中でもコアラが食用とするのは、ごく一部の種類です。

更に、コアラは地域(または個体)によって、食用するユーカリが違っていて、ビクトリア州のコアラは、他の州の別種のユーカリは食べないということです。

かなりわがまま(?)な動物です。

これでは移住させるにも、膨大な労力と費用がかかってしまいます。
では、オーストラリア以外の他国の動物園に、引き取ってもらうことは可能でしょうか。

動物園とユーカリ代

愛くるしいコアラは、人気者ですから、どこの動物園でも欲しがるのではないかと、単純に思ってしまいます。

ところが、これも結論から言えば難しいようです。

例えば日本では、東山動物園(名古屋市)や多摩動物園(東京都多摩市)で、コアラが飼育されています。


ユーカリは日本では自生していない植物ですので、栽培するしかありません。

オーストラリアから種を購入し、寒さに弱いユーカリを確保するため、沖縄県や鹿児島県などで栽培して取り寄せます。

しかも農薬が使えないので、害虫を駆除するために手間暇を多くかけなければならないのです。

その費用は、東山動物園で、年間およそ5,600万円です。

7頭(2015年1月現在)でこの金額ですので、1頭あたり800万円かかるということです。
この金額は、他の大型の動物と比べても破格の金額です。


東山動物園では、『コアラ応援プロジェクト』(2013年)をたち上げて、寄付を募りました。

日本ですらこの状態です。他の国が果たしてこれだけのコストをかけて、コアラを飼育するメリットを感じるかといえば疑問です。

コアラの今後

数年前のコアラの状況(安楽死)を書いてきましたが、現状は森林火災による個体数の激減となってしまったのです。

人間の思惑と自然の摂理(人間が結果的に起こしている可能性もあり)は、必ずしも一致しない一つの見本です。

激減してしまったコアラを、オーストラリア政府や州政府は、今後どのような施策で個体数を回復させていくのでしょうか。

民間の動きとしては、オーストラリア政府に対して「コアラを絶滅危惧種に指定してください」署名キャンペーンが行われています。


2月の大雨で、やっと終息したといえる森林火災の現状からすると、植林などで本来の自然環境を取り戻す作業には時間がかかります。

コアラに対しては、弱ってしまっている個別のコアラを、保護することから始める以外に方法はないのかもしれません。

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