国民年金納付率はどんな計算方法で出されているのか 30.7%が未納って本当?

年金老人 社会問題(課題)

毎年一度かならず、国民年金の納付率が、厚生労働省から発表されます。

2019年度の国民年金保険料の納付率は、前年度比1.2ポイント増えて、69.3%だったということです。

新聞では、厚生労働省の発表そのままを、記事にして伝えています。


日本人で、足し算引き算ができない人は、ほとんどいません。

保険料納付率69.3%と書いてあれば、タイトルに書いたように、自然と「未納率が30.7%もあるの!」と頭の中で計算するでしょう。

それでは本当に、国民の約3人に1人が、国民年金を未納しているのでしょうか。

この数字が、どんな計算方法で出されたものなのか、早速確認してみましょう。

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国民年金納付率の計算方法

国民年金保険料の納付率についての計算方法を、厚生労働省の資料で確認します。

今回は、2019年度の詳細をまとめた資料がまだアップされていないので、2018年度の資料から引用して説明します。

2018年度の国民年金納付率は、68.1%でした。

では、納付率の推移のグラフを見て下さい。

平成30年度の国民年金の加入・保険料納付状況(厚生労働省資料より引用)

下の方に、注1として、納付率の計算式が書いてあります。

「納付対象月数とは、当該年度分の保険料として納付すべき月数(法定免除月数、申請全額免除月数、学生納付特例月数及び納付猶予月数を含まない。)であり、納付月数はそのうち当該年度中(翌年度4月末まで)に実際に納付された月数である。」と書かれています。

一般の国民に、納付すべき月数や納付対象月数という言葉の意味がわかりますか?


一応、数字としては、7,287万月 ÷ 10,697万月 × 100 ≒ 68.1% となっています。

この数字って、はたして国民が知りたい数字でしょうか?

知りたいのは、どれだけの人が国民年金料を納めていて、どれだけの人が納めていないのかという数字のはずです。

国民年金納付率のカラクリ

では、国民年金保険に加入している人、国民年金を納めている人、国民年金の納付を免除されている人、国民年金を未納している人、それぞれの数字を確認してみます。

この数字もわかりやすく、2018年度のものを基準に見てみます。

国民年金は基礎年金といわれ、厚生年金に入っている人も当然のことですが、その分を支払っています。


公的年金加入者数は、およそ6,745 万人です。そのうちの国民年金保険料のみの納付対象者が、1,471万人です。

更にその中で、未納者数は138万人となります。ちなみに全額免除者や納付猶予者は、574万人でした。

国民が知りたいのは、国民年金を納めるべき人数と未納者の人数のはずです。
では計算します。

138万人 ÷ 6,745万人 × 100 ≒ 2.05%


『2.05%』、2018年度の国民年金の未納付率がでました。

年度は違いますが、タイトルの数字『30.7%』とは、大きく異なっています。

国民年金納付率が低い理由

なぜこのような数字のトリックが、おこなわれているのでしょう。

断言はしませんが、厚生労働省が省益優先で、物事を考えているからだと思います。


毎年各省庁は、財務省に対して、政策を実施するのに必要な経費を、要望書にまとめて送付します。いわゆる概算要求といわれるものです。

財務省はこの概算要求の調整をおこない、各省庁の要望を削っていきます。

そして調整したものが、財務省原案として閣議にかけられ、閣議決定した後に、国会の予算委員会で審議が行われるという順番になります。

財務省原案が決まる前に、各省庁では、自分のところの予算を削られないようにするため、その経費がいかに必要かということを訴えたいわけです。


もうお分かりですね。

予算(経費)をいかに確保するか、その為には説得力のある数字が欠かせません。

農林水産省で毎年出される食料自給率の数字も同様でしょう。
  『日本はなぜ食料自給率をカロリーベースで算出しているのか?


厚生労働省には、138万人の国民年金未納者を減らしていく施策は、引き続き取り組んでいってほしいと思います。

しかし、あまりにも極端な数字で国民の不安を煽るようなことは、慎んでもらいたいですね。


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