高齢者がかかわっているいないに関係なく、東京の池袋で心痛い交通事故がおこりました。
【朝日新聞DIGITAL 2019.4.19】
朝日新聞DIGITAL
東京・池袋で19日昼、87歳の男性が運転する車に通行人が次々とはねられ、31歳の母親と3歳の娘が死亡した。運転していた飯塚幸三さんは周囲に運転をやめる意思を示したことがあったという。
加害者男性が元官僚だったことが関係しているのかわかりませんが、事故から9ヵ月以上が経ってからの在宅起訴には、疑問の声があがっています。
【夕刊フジ 2020.2.7】
責任追及の舞台は法廷へ。東京・池袋で昨年4月、乗用車を暴走させ母子を死亡させたとして、旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(88)が自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で在宅起訴された。遺族の男性会社員(33)は公判で被害者参加制度を利用し、飯塚被告に直接質問する意向を明らかにした。
夕刊フジ
それにしても、足が不自由で、杖をついて歩行していた87歳の老人が運転していたとは、にわかに信じがたいことです。
私も時々車の運転をしますが、自身の戒めとして、『自動車は走る凶器』であることを、肝に銘じて運転するべきと、改めて感じさせられました。
高齢者の免許証保持数や運転事故件数について、今回は調べてみます。
高齢者の運転免許の現状
高齢者の自動車運転免許証について、まず確認してみます。
一般的に高齢者というと、65歳以上のことをイメージするかと思います。WHO(世界保健機関)や日本の医療制度でも、65歳以上を高齢者としています。
それに対して道路交通法では、70歳以上を『高齢運転者』としています。(第四十五条の二)
警察庁交通局運転免許課によると、平成30年末現在、70歳以上で運転免許証を持っている人は、11,296,951人です。
75歳以上は5,638,309人、80歳以上が2,265,107人となっています。【運転免許統計 平成30年版(警察庁交通局運転免許課)】
この数字にはちょっと驚きです。80歳以上の運転免許証保持者が、およそ226万人もいます。
70歳以上になると、運転免許更新の際に高齢者講習が義務付けられます。講習は2時間で、講習内容は、座学・運転適性検査(60分)と実車(60分)になります。
更に75歳以上の高齢者は、高齢者講習を受ける前に、認知機能検査を受ける必要があります。認知機能検査をクリアしないと高齢者講習は、受けられません。
判定結果は3段階あって、結果次第では医師の診断書が必要です。もし認知症と診断されれば、当然、免許証の停止または取消しとなります。
運転免許証の自主返納
また、高齢者が自分自身で「もう車の運転は無理」と判断して、運転免許証を返納するケースが増えています。
警察庁が発表した統計では、2017年(平成29年)年間で423,800人が運転免許証を返納しています。
そのうち70歳以上で返納した人が、355,910人(構成率84.0%)になっています。

ただ自主返納をすすめられても、素直に受け入れられない事情もあります。
都心部では、電車やバスなど交通網が発達しているので、高齢者が自動車を運転しなくても、生活にさほど支障をきたさないでしょう。
でも、地方の高齢者はそうはいきません。
バスが1時間に1本、電車も走っていない地方では、自動車がなくては、病院への通院や買い物も充分にできません。
高齢者運転の問題点
高齢者の運転の問題点は、何よりも判断のスピードが落ちることです。
高齢になればなるほど、目視判断力の低下、危険を察知してからの反射の低下など、全般的な身体機能低下することを、誰も止められません。
その反面、運動神経の衰えを悟っているため、より慎重に運転するので、若者にありがちな無謀運転をすることが、極端に少なくなります。
ここに興味深い統計があります。警察庁交通局が発表している『交通事故の発生状況』が、それです。
まず、年齢層別免許保有者10万人当たり交通事故件数の推移を見て下さい。

16歳~19歳の事故は例外として、80歳以上の事故件数よりも20~29歳の事故件数の方が多いのです。
先ほど書いた『若者にありがちな無謀運転』が数字的に証明されています。
次に、年令層別の交通事故件数の推移はこちらです。

事故件数では、85歳以上は4,203件です。
最も多い20歳~29歳の事故件数は、84,975件ですので、単純に件数だけでいえば、20分の1の割合になります。
10万人当たりの交通事故件数でも、通常の事故件数でも、20歳~29歳の件数が一番多いのです。
もう一つ確認しておきたいのが、自動車事故における死亡事故件数です。

ご覧のように、事故件数と違い、10万人あたりの死亡事故件数では、80歳以上の死亡件数が他の年代を圧倒しています。(16~19歳を除く)
これらの統計から、80歳以上の高齢者は自動車事故件数は飛びぬけて多くはないけれども、事故をおこした時の死亡の割合は高いということがわかります。
自動車は走る凶器
昔から運転手を戒めることから『自動車は走る凶器』と言われてきました。
軽自動車といわれる排気量660CC以下の車でさえ、その重量は600㎏前後あり、1800CC以上の自動車であれば、1トンある車両も珍しくありません。
その重量の自動車が、時速40㎞/h以上のスピードでぶつかってきたらどういう事になるかは、小学生でもわかります。

個人的に思うのが、自動車を運転する時でも、歩行者の時でも、想像力をはたらかせて行動することの大切さです。
「このスピードで運転しているのに、この車間距離で大丈夫か?」
「横断歩道が青信号になったからといって、車の確認をせずに渡って大丈夫?」
時々、スマホ画面を見ながら、横断歩道を渡っている人をみかけます。これは、よそ見運転をするドライバーもいるという、想像力が足らない結果の行動です。
車間距離を充分にとらないドライバーも同じです。前の自動車が急ブレーキをかけるかもしれないという、想像力を働かせていないからです。
繰り返しになりますが、自動車のハンドルを握る以上、老若男女関係なく、「自分は大丈夫」という慢心を捨てて、安全運転に心がけしたいものです。
【関連記事】⇒『高速道路で逆走車に出くわしたらどうしよう』
コメント