「日本にもロックダウンの可能性がある」の嘘 日本の法律でできること

法律・行政関連

言うまでもなく、日本は法治国家です。

日本国憲法を頂点に、法律や条例が作られ、首相や地方自治体の首長も、すべて法に基づいて政治をおこなわなければなりません。

これが前提です。

では、タイトルの日本のロックダウンの可能性について考えてみます。

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ロックダウンの定義付け

まず、曖昧な“ロックダウン”という言葉を、ここで一応、定義付けしましょう。

この言葉がまず注目されたのは、小池百合子東京都知事の3月23日の記者会見でした。

「一昨日、専門家の皆様方をお招きいたしまして、意見交換会を行わせていただきました。そして、専門家の皆様方からのご指摘で、世界各地で都市が封鎖されている、いわゆるロックダウンをされているところで、海外から多くの在留邦人が帰ってこられるという状況がございます。」

小池知事記者会見(2020.3.23)

「世界各地で都市が封鎖されている、いわゆるロックダウン」この発言後、マスメディアでは以下のような見出しで、報道を過熱させていきます。

  • 『小池都知事「ロックダウン」警告の真意』(毎日新聞)
  • 『ロックダウン、実際どうなる?』(時事通信)
  • 『首都封鎖に現実味 知事「何もしなければロックダウン」』(朝日新聞)

小池都知事は、都市封鎖することをロックダウンと言っていました。

ロックダウンは、英語で『lockdown』と書きます。

Weblioでは、こう説明しています。

公共施設などで、外部からの闖入者に対して内部の人間の安全確保のため建物を封鎖すること。※闖入者:突然入って来た者

Weblio

これ以上の説明は、いらないかと思います。

例えば東京都をロックダウンするということは、陸路(電車も含)・空路・海路を完全にふさぎ、他の都道府県との往来を一切させないことです。

3月23日の会見で小池都知事は、こうも話していました。

「事態の今後の推移によりましては、都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置をとらざるを得ない状況が出てくる可能性があります。」

小池知事記者会見(2020.3.23)

明確に『ロックダウンの可能性がある』と言っています。

本当に、そのようなことが起こるのでしょうか。

緊急事態宣言と強制

会見から約2週間後の4月7日、安倍首相は、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象にした緊急事態宣言を発出しました。

期間を5月6日までとしています。

緊急事態宣言は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて宣言されました。

3月14日に、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律が施行され、新型コロナウイルス感染症を『新型インフルエンザ等』の中に、入れ込んだのです。

【新型インフルエンザ等対策特別措置法】
第三十二条 
政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。

新型インフルエンザ等特別措置法

要約すると、首相は、新型インフルエンザ等が急速にまん延して、甚大な影響が出た時に、緊急事態宣言をすると書いてあります。

そして、『実施すべき期間』『実施すべき区域』『概要』を決定します。


更に首相(政府対策本部長)は、緊急事態措置の実施に関する重要な事項を定め、都道府県対策本部長(知事)に必要な指示をします。

それを受けて、今度は各知事や各市区町村長が措置をとるわけですが、法律には “要請する” “指示する” “講じるよう求める” などの言葉が並んでいます。

これは、強制ができないことの裏返しの言葉といえます。


ただし、この法律の中にも、強制できることは存在します。

それが、『土地等の使用』と『物資の売渡し』についてです。

第四十九条
2 前項の場合において土地等の所有者若しくは占有者が正当な理由がないのに同意をしないとき、又は土地等の所有者若しくは占有者の所在が不明であるため同項の同意を求めることができないときは、特定都道府県知事は、臨時の医療施設を開設するため特に必要があると認めるときに限り、同項の規定にかかわらず、同意を得ないで、当該土地等を使用することができる。

新型インフルエンザ等特別措置法

第五十五条
2 特定物資の所有者が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施するため特に必要があると認めるときに限り、当該特定物資を収用することができる。

新型インフルエンザ等特別措置法

それぞれ、『同意を得ないで、当該土地等を使用』『特定物資を収用する』とあるように、この2つの事項に関しては、強制することが可能になります。

ロックダウンのための法的根拠

ここまで見てきておわかりのように、緊急事態宣言が出されても強制できることは、必要な土地の使用と物資を売り渡してもらうことだけです。

後は、あくまで “要請”・“指示” でしかありません。

新型インフルエンザ等対策特別措置法を根拠にして、都市封鎖などできないのです。


では、他の法律では、できるのでしょうか?

都市を封鎖して往来を禁止したり、不要不急の外出を禁止して罰則を与えるような法律が、日本にあるのかという点です。

日本には、それがありません。


マスメディアでは、海外で外出禁止令がでて、それに反した人達が罰金を取られているという報道があります。(禁固刑もあり)

これは、各国が緊急事態として法律に則り、処罰しているのです。

日本国憲法には、緊急事態条項(国家緊急権)が存在しません。


例えば、日本弁護士連合会は、2017年に「日本国憲法に緊急事態条項(国家緊急権)を創設することに反対する意見書 」を出して、強硬に反対しています。

意見の趣旨には、このような文言があります。

〇 緊急事態条項(国家緊急権)は,深刻な人権侵害を伴い,ひとたび行使されれば立憲主義が損なわれ回復が困難となるおそれがある 

〇 戦争・内乱等・大規模自然災害に対処するために対処措置を講じる必要性は認められず、~ 内閣及び内閣総理大臣の権限濫用を防ぐことはできない。

日本弁護士連合会

この意見書は、自民党の日本国憲法改正草案に対するものとして提出されたものです。


日本は村社会と言われるように、同調圧力に弱かったり、村八分される立場を極端に嫌います。

そのため強制がなくても、要請や指示に従う人達の方が、圧倒的に多いのです。

よく言えば、和を尊ぶ国民性と云ってもいいかもしれません。

それでも、「そんなの関係ねぇ」的に、要請や指示に従わない人も一定数存在します。


今回の新型コロナウイルスの件を教訓に、緊急事態条項の必要性を感じた人も多かったと思います。

この問題が通り過ぎた後、賛否はともかく、もっと緊急事態条項について議論していく必要性はあるでしょう。

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