メタンハイドレート実用化の現状は? 課題と実用化の時期を確認

社会問題(課題)

メタンハイドレートが日本近海(南海トラフ)で発見されたのは、1980年のことです。

日本自前の資源として期待される一方、メタンハイドレートを資源化することは困難という意見もあります。

果たしてメタンハイドレートの実用化は可能なのでしょうか?

現在メタンハイドレートの開発が、どの程度進んでいるのか、その現状を調べてみます。

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メタンハイドレートとは?

そもそもメタンハイドレートとは何なのか、まず基本的なところから、おさえてましょう。

メタンハイドレートの『メタン』とは、炭素と水素が結合した炭化水素で、燃えるガスのことです。 それに対して『ハイドレート』は、「水和物。分子またはイオンに水分子が結合したもの」をいいます。

簡単に言ってしまえば、水と結合した天然ガスが、低い海水温によって凍ってしまったものが、メタンハイドレートです。

震災後の天然ガスへの依存

日本では、天然ガスの97.7%(2020年現在)を輸入に頼っているのが現状で、その輸入の内訳は以下の通りです。

日本ガス協会HPより抜粋

LNG(Liquefied Natural Gas)とは、液化天然ガスのことです。

天然ガスは通常気体ですが、マイナス162℃で冷却すると液体にすることができます。

気体の天然ガスと比較すると、液化天然ガスの場合体積が約600分の1になるので、LNGタンカーで大量輸送が可能になります。

また、日本における一次エネルギー供給構造ではおよそ25%、電源構成の天然ガスの割合ではおよそ46%を占めていますので、天然ガスが日本にとって重要な資源であることに間違いはありません。

  ※一次エネルギー:自然から採取されたままの物質を源としたエネルギーのこと

特に震災後は、原子力発電所を停止させざるを得ない状況の中、原子力の代替として天然ガスへの依存度が高まっています。

メタンハイドレートの埋蔵量

日本近海には推定で、約100年分のメタンハイドレートが眠っているとのではないかと言う人もいます。

しかし実際のところ現段階では、その埋蔵量を特定することはできないというのが、一般的な考え方です。

埋蔵量を知るためには、まずは日本近海に眠っているメタンハイドレートの原始資源量を調査しなくてはなりません。

更に、メタンハイドレートからメタンをどれだけ回収できるか、生産方法を確立(回収率)しなければならないのです。

回収率が確立されて初めて、メタンの埋蔵量の総量がわかるわけです。

<資源量・埋蔵量の関係>
原始資源量 × 回収率 =(可採)埋蔵量

また、太平洋側と日本海側では、主なメタンハイドレートの形態が違っています。

太平洋側のメタンハイドレートは砂層型が多く、それに対して日本海側のメタンハイドレートは、表層型が多いのが特徴です。

この違いによって、メタンハイドレート採掘の方法やコストも大幅に違うとみられ、資源化へのハードルの高低につながっています。

メタンハイドレート開発の現状

では現状、メタンハイドレートの資源化の取り組みは、どこまで進んでいるのでしょうか。

経済産業省は、2001年から「メタンハイドレート開発計画」を開始させました。

しかしその取組みは遅々として進んでいませんでしたが、2007年の第一次安倍内閣において、海洋基本法が制定されたことで前に進み始めます。

その後、法律制定により翌年には海洋基本計画が作成され、その中にメタンハイドレートに関する計画が盛り込まれます。

以下、その記された文章です。

○日本周辺海域に相当量の賦存が期待されるメタンハイドレートを将来のエネルギー資源として利用可能とするため、海洋産出試験の結果等を踏まえ、平成30年度を目途に、商業化の実現に向けた技術の整備を行う。
その際、平成30年代後半に、民間企業が主導する商業化のためのプロジェクトが開始されるよう、国際情勢をにらみつつ、技術開発を進める。

○日本海側を中心に存在が確認された表層型のメタンハイドレートの資源量を把握するため、平成25年度以降3年間程度で、必要となる広域的な分布調査等に取り組む。

この海洋基本計画では、初めて表層型メタンハイドレートの調査についてふれています。

その後、やっとメタンハイドレートの海底調査をおこなったのが、2013年です。

2013年3月に地球深部探査船「ちきゅう」を使って、愛知県渥美半島から三重県志摩半島の沖の海底調査を行い、メタンガスを取り出すことに成功しています。

また海洋基本計画にのっとり、2013年から2015年にかけて、表層型メタンハイドレートの資源量把握に向けた調査が行われました。

その調査により、円柱状のメタンハイドレート(ガスチムニー構造)が、1742箇所存在していることが確認されました。

現状では、メタンハイドレートの実用化の見通しはたっていません。

メタンハイドレートと日本海連合

第二次安倍政権になってからは当初の計画通り、メタンハイドレートの調査が進んできていますが、それ以前は、はたから見るとなかなか進まないというふうにも感じられました。

これに対して、日本海側の都道府県の知事達が立ち上がりました。

経済産業省や国会議員にはまかせておけないとばかりに、日本海に面した12の府県知事が、海洋エネルギー資源開発促進日本海連合を立ち上げたのです(青森県と山口県は2014年に加入)。

2012年9月のことです。

日本海側の都道府県は、ややもすると太平洋側の都道府県に比べて、近代化が遅れているイメージが定着しています。

それがもしこのメタンハイドレートの資源化に成功すれば、経済面で活性化していく可能性が多いにあります。

海洋エネルギー資源開発促進日本海連合では、海洋エネルギー資源の開発に関する情報収集、調査研究、国への提案などの活動を展開しています。

青山繁晴氏とメタンハイドレート

先ほどの写真は、山田啓二日本海連合会長(京都府知事)が、菅官房長官に要望書を手渡しているものです。 府県知事と一緒に左端に写っている人物は、参議院議員の青山繁晴議員です。

青山繁晴議員は国会議員になる前、独立総合研究所の社長時代からメタンハイドレートが『日本自前の資源』になると熱心に取り組んできました。

海洋エネルギー資源開発促進日本海連合が設立されるきっかけも、当時の青山繁晴氏の発案からといいます。

青山繁晴議員の奥様は、東京海洋大学の青山千春准教授です。

水中音響学の専門家で、魚群探知機で日本海側の表層型メタンハイドレートの存在を発見し、青山議員と二人三脚でメタンハイドレートの資源化に向けて取り組んできました。

今までは一民間人としてメタンハイドレートに対して係わってきた青山繁晴氏が、2016年の7月からは国会議員として、国のエネルギー問題に係わることが可能になりました。

まだ一年生国会議員とはいえ、与党議員で専門的知見を持った青山繁晴議員に対しては、官僚も無視できない存在になっています。

経済産業省の官僚からどのようなことを言われたのか、インターネット放送の『虎ノ門ニュース』で青山繁晴議員が語っています。(動画削除されていました。)

専門的な知識を持った国会議員の影響力で、優秀な官僚の意識が変わることを、如実にあわらしたエピソードです。

これはメタンハイドレートの件に限らない、国会議員と官僚の理想的関係ではないでしょうか。

メタンハイドレート実用化の課題や問題点

メタンハイドレートの実用化が可能になれば、資源の少ない日本にとって、どれほど希望の存在となるか、はかり知れません。

そのメタンハイドレートに対して、「メタンハイドレートは資源ではない」と言いきる人物がいます。

元国立環境研究所所長の東京大学名誉教授である石井吉徳氏です。

石井吉徳氏の考えを抜粋してみます。

「資源は質が全て、量ではない。濃集されていないものを集めるにはエネルギーが要る。ところが日本ではその意味が理解されない。」

「資源3条件とは1.濃集されている 2.大量にある 3.経済的な位置にあるものだ。資源にするには、この3つの条件を満たすべきだが、社会では殆ど理解されておらず、専門家の間ですら誤解がある。」(メタンハイドレートは、2の要件しかみたしていないということ)

「(メタンハイドレートからメタンガスを回収することは)技術的には可能であっても、エネルギーコストはさら増大しよう。」

「楽観的な話ばかりがメディアに流される。既に利権構造化しているのであろうか、『メタンハイドレート・ムラ』が出来上がったようだ。」   <alterna より引用>

引用した最後の一文は、完全な印象操作であり相当な悪意を感じます。

利権構造でいえば、天然ガス輸入で膨大な利益を得ている企業群の方が、遥に巨大であることは間違いありません。日本が自前資源でエネルギー供給できるようになれば、現状の彼らの存在意義が失われるのですから。

結局のところ、メタンハイドレートの課題は、資源化できるかできないかです。現時点では確かに石井吉徳氏の考えにも一理あるのかもしれません。

ただ人類の科学文明は、不可能と思われるような事象に挑戦し、乗り越えてきた歴史でもあります。
仮に現在の科学技術では困難を極めているからといって、そこで諦めてしまっては、新しい物は何も生み出されないでしょう。

ましてやメタンハイドレートの実用化に成功すれば、日本は今までの資源輸入大国から資源大国へ、生まれ変われるかもしれないのです。

このような課題に対しては、強力な政治家のリーダーシップが必要不可欠です。

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