政務活動費の不祥事や不正はなぜおこった 法律と現状の仕組みを確認してみる

議会・政務活動費 政治・経済関連

忘れた頃に出てくるニュースが、政治と金の問題です。

カジノを含む統合型リゾート事業いわゆるIR汚職問題は、政治家と業者の昔からある贈収賄事件です。

また国会議員夫婦の選挙での買収疑惑も、選挙のたびごとに逮捕者を出し、何ども繰り返される選挙の悪しき文化(?)となっています。


数年前には、多くの国民の記憶に刻まれた、野々村竜太郎氏の号泣会見がありました。

この時の政治とお金の問題は、政務活動費を不正に使い込んでいたのではないかというものでした。

今回は、政務活動費というものがどういうものなのか、調べてみたいと思います。

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政務活動費とは

そもそも『政務活動費』とは、どのようなものなのでしょうか。

名前からだいたい想像がつくと思いますが、地方議会の議員が、政策調査研究等の活動のために支給される費用のことです。


会社でいえば、経費が前もって決まった金額支払われているようなものです。

ちなみに国会議員の場合は、文書通信交通滞在費が月100万円、立法事務費(立法調査研究活動を行うための必要経費)が月65万円支払われています。

【地方自治法】
第100条
14 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる。この場合において、当該政務活動費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならない。

地方自治法

この政務活動費は、議員報酬(一般でいう給与)とは別に支給される費用です。

金額は、各自治体が条例で定めることになっていますので、費用の多い少ないは自治体によってまちまちになります。

政務活動費問題発覚

2014年6月、それは異様な光景でした。

兵庫県議会議員の野々村竜太郎議員(当時)が、政務活動費の収支報告書の虚偽記載問題で、会見を開いたのです。

そこで野々村竜太郎氏は泣きながら、時には意味不明な言葉を発し、醜態をさらしてしまいました。一時はワイドショーで、この話題ばかり取り上げられていました。


結局、野々村竜太郎氏は、政務活動費をだまし取ったとして詐欺罪などに問われ、懲役3年執行猶予4年の刑が、確定(2016年7月)しました。

この会見で政務活動費が注目されたこともあり、他の地方議員もその使用用途を問題にされました。

【産経WEST 2018.2.19】

平成27年に発覚した神戸市議会の会派「自民党神戸」(解散)による政務活動費(政活費)の不正流用事件で、政活費計約2300万円をだまし取ったとして詐欺罪で在宅起訴された元市議3人の判決公判が19日、神戸地裁で開かれた。

判決によると、3人は架空や水増しした領収書を添付した収支報告書を作成し、岡島被告は24~26年度に約969万円、竹重被告は22~26年度に約656万円、梅田被告は22~26年度に約684万円の政活費をそれぞれ詐取した。

産経WEST

【朝日新聞DIGITAL 2015.7.27】
大阪市議の伊藤良夏氏(大阪維新の会 住吉区選出)が、トヨタ自動車の高級車「レクサス」をローンで購入したのに、政務活動費80万8450円を「自動車リース費用」の名目で支払いに充てていたことが朝日新聞の取材で分かった。
伊藤氏は、「契約は母親任せで、確認せずにリース契約と思い込んでいた」と説明。
不適切な支出と認め、27日までに全額を返還した。

朝日新聞DIGITAL

悪意はなかったのか 故意かはわかりませんが、政務活動費を市民からお預かりしているお金という認識が強くあれば、こんないい加減な使い方はできないはずです。

地方自治法の改正

先ほど、地方自治法100条の14を載せましたが、改正(施行)は2013年3月1日におこなわれました。

この改正により『政務活動費を充てることができる経費の範囲』を条例で明確化するようになったのです。

にもかかわらず、上記の新聞記事のような事案がおこなわれていたのです。


ある地方議員のHPでは、野々村元議員の政務活動費問題に対して、「うちの議会では、まず間違いなく起きえません」と言いきっています。

政務活動費の使途基準

例えば、東京都世田谷の区議会では条例に基づいて、各議員の政務活動費の内訳をインターネット上で公開しています。

区議会HPにアクセスすれば、各議員の政務活動費の「収支報告書」「会計帳簿」「領収書その他の証拠書類」を見ることができます。


また、政務活動の経費に充てることができる項目内容とできない項目も詳細に決められています。
  参考:世田谷区政務活動費の交付に関する条例(政務活動費:月額240,000円)

世田谷区を例にすれば、使途基準はあくまで、区政に関する調査研究のための活動で発生する経費であったり、区政報告の印刷費用などになります。


各議員のHPの管理費用や、議員が行う活動を補助する職員の人件費も含まれます。

反対に、飲食が主目的の会議(いわゆる新忘年会など)の参加費や親族を雇用してかかる人件費は、政務活動費として認められていません。

前払いと後払い

政務活動費は、前払いされる議会の方が圧倒的に多いようです。

同様に世田谷区議会を例に出すと、四半期の最初の月に720,000円が支払われています。


全国市民オンブズマン連絡会議では、この前払いが『でたらめな使い方』になる原因の一つであると指摘しています。

本当に少しずつではありますが、後払い方式にかえている議会もあります。

例えば、世田谷区議会と比べるとだいぶ小さい議会ですが、島根県の浜田市議会では、年間10万円の政務活動費を後払い(精算払い)にしています。

政務活動費の有効活用

今回は主に世田谷区議会の事例を見てきましたが、政務活動費の公開が充分に進んでいない地方議会も存在します。

これくらいの手間(収支報告書や領収書提出)をかけれない議員(議会)ならば、政務活動費を渡す価値があるでしょうか。

政務活動費の情報公開は、最低限おこなうべきものです。


政務活動費については、使途基準の項目がはっきり書かれているのですから、それに関連したことに使えばいいだけのことです。

政務活動費は言うまでもなく、税金から生み出されるものです。

議員として選らばれ、市区民の負託を受けて政務活動を行い、その貴重な税金を活動費用として使わせてもらっているという自覚が少しでもあれば、今回取り上げたようなニュースが出ることもないでしょう。


政務活動費は、議員として良い仕事をしてもらうためには、必要なものであると思います。

議員自身の自覚と、情報公開・チェック機能の強化により、有効な政務活動費としてもらいたいですね。


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