北海道新幹線の開業に伴い、焦りや切実な願望で、現状の新幹線整備を見つめている地域があります。
そう、日本列島四島のうち唯一新幹線が開業していない四国です。
新幹線整備計画外の四国新幹線
前回の記事 『整備新幹線計画とは? まだまだ続く新幹線の延伸計画』で書いたように、四国新幹線は、整備新幹線の5つの路線に入っていません。
1970年に「全国新幹線鉄道整備法」がつくられた後、続いて『基本計画』が立てられました。
上の地図を見てもらえばわかるように、その計画内では、四国新幹線や九州の東側の地域、山陰地方横断、東北日本海側地域を走る新幹線の路線計画が存在しています。
ただ次の段階である『整備計画』という具体的計画内には、それらの地域はまだ入っていませんでした。
第二期・整備計画
現状に対して、現内閣官房参与であり、京都大学院の藤井聡教授は、「10年以内に 『現整備計画』 を完了させると共に、『第二期・整備計画』 の策定と20年以内の整備を目指すべきである」 とまで述べています。
藤井聡教授といえば、『列島強靭化論』や『公共事業が日本を救う』などの書籍を出している土木工学の専門家です。
内閣官房参与がどれくらいの影響力を発揮できるのかはわかりませんが、四国の人達にとっては力強い味方となります。
四国経済連合会の専務理事は昨年、「九州、北陸で開業し、来春は北海道まで延びる。四国だけ、ぽっかり取り残された状態だ」と焦りを隠しません。
2008年に会長職を退いて、現在JR四国の相談役となっている梅原利之氏は、「もはや経営努力では限界がある。新幹線が来なければ四国の在来線は絶滅する」とまで、危機感をあらわにしています。
四国新幹線の展望
そういった中、昨年3月の日経新聞にこんな記事が載りました。
【日本経済新聞 2016.3.30】
国土交通省は29日、今後10年の四国地域の活性化策など将来展望を描いた「四国圏広域地方計画」を決定した。基本計画にとどまっている四国への新幹線導入を検討課題として初めて盛り込んだ。国交省は地元自治体とも協力しながら計画を推進していく。
続けて、『千葉昭四国経済連合会会長は、「総意ともいうべき新幹線が反映されたことは画期的」と具体化に期待』と書かれています。
ただ、「四国圏広域地方計画」という国土交通省の全61ページの資料(平成28年3月)を見てみると、新幹線というキーワードは、2ヶ所しか出てきません。
一つは、「四国圏では新幹線は整備されていない」 というどうでもいい箇所と、もう一つは、「新幹線整備に係る基礎調査が行われているなど、鉄道の抜本的高速化が長期的な検討課題となっている」という新聞記事で紹介されている箇所です。
素人の私からすると、「えっ、これだけ?」というくらいにしか触れられていません。
政治、行政の世界では、こういった一文言が大きな意味をもってくるのでしょうか。
四国新幹線の必要性
四国新幹線開業の可能性としては、一段階アップしたのかもしれません。
必要性という点から考えれば、答えは明らかです。「必要」に決まっています。
人口減少と高齢化、一極集中と地方の過疎化などの課題を考えれば、都市部と農村部のインフラのネットワークを密にするという手段は欠かせません。
地方創生や観光立国という観点からも、新幹線開業がその手助けになるでしょう。
もちろん、ここで出てくる問題があります。
それは、お金すなわち『財源』と『採算性』です。これなしには、何も進みません。
国土交通省のHPでは、整備新幹線の基本条件として、
1.安定的な財源の見通しの確保
2.収支採算性
3.投資効果
4.営業主体であるJRの同意
5.並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意
を上げています。(国土交通省「整備新幹線について」)
当然の内容です。
これらをクリアできるだけの財源とビジョンが必須です。
「新幹線が通れば何とかなる」という意識では、過去の公共事業(負の部分)の過ちを繰り返すことになってしまいます。
北陸新幹線の延伸ルート(敦賀から新大阪間)決定の状況と、デフレ脱却のきっかけとなる経済状況に日本全体がなっていれば、藤井教授が言われるように、『第二期・整備計画』の話が急速に進む可能性は高まっていくでしょう。
【関連記事】⇒『整備新幹線計画とは? 続く新幹線の延伸計画』
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