少し前の話しですが、特別永住者制度の見直しについて、このような報道がなされました。
橋下徹氏が、まだ大阪市長だった頃の話題です。
【J-CASTニュース 2014.10.22】
在日韓国・朝鮮人らの特別永住者制度について、維新の党共同代表で大阪市長の橋下徹氏が、見直して一般永住者制度への一本化を目指す考えを示した。特別扱いしなくなれば、ヘイトスピーチも差別もなくなるのではないかというのだ。
橋下徹氏は、特別永住者制度の見直しが必要だと述べています。
在日朝鮮人への差別的な言動が、問題視されていた頃の話題です。
今は、ほとんど話題にすらなりません。
そもそも“特別永住者”とはどういった人達で、一般永住者と特別永住者の違いは、何なのでしょうか?
特別永住者とは
まず基本的なことをおさえると、“一般永住者” や “特別永住者” はともに、日本国籍を持たない外国人です。
“永住者”というのは、日本で永住権を取得した外国人のことをいいます。
特別永住者とは、大東亜戦争が終戦となり、サンフランシスコ平和条約締結後にも、日本に在留していた韓国・北朝鮮・台湾などの人達を、正統に滞在させるために与えた法的地位のことです。
入国管理特例法
入国管理特例法(通称)という法律があります。
正式名称は、『日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法』です。
第一条
この法律は、次条に規定する平和条約国籍離脱者及び平和条約国籍離脱者の子孫について、出入国管理及び難民認定法の特例を定めることを目的とする。
その名の通り、特別永住者に対する出入国に特例を与えている法律になります。
“一般永住者” と “特別永住者” と区別されているわけですから、当然、色々な特例が “特別永住者” にはあります。
例えば、国外退去強制の条件(第22条)が緩かったり、再入国許可の有効期間年数(第23条)が長かったりします。
また、些細なことかもしれませんが特別永住者は、発行される特別永住者証明書の携帯義務がありません。
2012年7月9日に外国人登録法が廃止され、新たな制度に移行しました。
その際、一般の永住者は、今までの外国人登録証明書を在留カードへ切替えることが必要になりました。
一般永住者は、在留カードは常に携帯していなければならず、不所持の場合には罰金刑が課せられます。
在日(特別永住者)特権?
上記にあげた特別永住者への特例に対して、『在日(特別永住者)特権』を許すなと主張している人達もいます。
「在日特権を許さない市民の会」、略称「在特会」です。
在特会に対しては、その存在を全面的に否定する人達がいたり、または主張の大筋は間違っていないのだから、その主張の仕方(暴言的主張・ヘイトスピーチ)を変えた方がいいという人達もいます。
また、在特会の主張とは違い、「“在日特権”なんてない」と言う人達もいます。
これは、『在日特権』という言葉の定義を不明確なまま議論するので、発生する問題かと思います。
この『在日特権』問題に限った事ではないですが、発展的な議論をするためには、論じる言葉の定義を明確にしておかないと、まったく話がかみ合いません。
言葉に対する定義を無視して議論をする人達は、自分達の主張を正当化するためだけに議論しているとしか、私には感じられません。
先ほどふれたように、明らかに特別永住者と一般永住者との違いはあります。
そもそも違いがないのなら、法律的に特別永住者と一般永住者を区別する必要がないのですから、それは誰も否定できない事実です。
“その違い”を『特権』と取るか取らないかの違いです。
以前よく指摘されてきた『外国人で特別永住者だけが社会保障の対象となっている』は事実に反しています。
また『通称名の悪用使用』についての対策は、法改正や総務省の通達で改善されていますし、通称名使用は特別永住者だけの特権ではありません。
今後の特別永住者の存在
既に在日5世・6世が存在する現状で、このまま “特別永住者” という存在を日本で認め続けていくべきなのでしょうか。
2020年12月末時点の特別永住者は、304,430人です。(前年312,501人・前々年321,416人)
冒頭の記事で紹介した橋下徹氏も、このことに対して、「どこかの時点で、通常の外国人と同じような永住者制度に一本化していくことが必要になる」と言及しています。
「特別扱いは差別を生む」とも語っています。
冒頭のニュースは、2014年10月の記事でした。
その後、私が調べた限りでは、政治家による特別永住制度の見直しの動きはありません。
サンフランシスコ平和条約締結から、既に69年が経っています。
そろそろ特別永住者制度に対して、真剣に議論していくべき時がきているのでしょう。
不当な民族差別や偏見をなくすためにも、避けていてはいけない課題ではありますが、その反面で1年ごとに8千~9千人の特別永住者数が減っている現実もあります。
その推移から考察すれば「あと半世紀もすれば特別永住者そのものがほとんどいなくなる」ので、そのまま問題先送りで済ますことも十分考えられます。
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