第48回衆議院議員選挙(2017年10月)が終わりました。
一つのサプライズの結果として、山尾志桜里議員の当選があります。
民進党を離党して無所属での出馬となった今回の衆院選は、山尾志桜里にとって当然のことながら不利な状況の選挙戦ではありました。
正直なところ個人的に私は、山尾志桜里の考え方や政治手法に賛同できません。ただ今回の衆院選でなぜ、山尾志桜里は当選できたのか、単純に興味を持ちました。
愛知7区と山尾志桜里の当選までのことについて、可能な限り客観的に調べてみたいと思います。
山尾志桜里離党の経緯
山尾志桜里経歴
山尾志桜里は、検察官出身の衆議院議員で、今回の当選で3期目になります。 1974年7月24日生まれで現在43歳、夫と子供一人の三人家族です。
今さら説明するまでもないかもしれませんが、山尾志桜里が世間一般に知られるようになったのは、国会での安倍首相への質疑を、マスメディアが大きく取り上げたからです。
山尾志桜里は、『保育園落ちた、日本死ね』という匿名ブログを紹介し、安倍首相を激しく詰問しました。
普通に考えて、取り上げた事例がとんちんかんなものであれば、どんなに主張が正しくても、それが霞んでしまいます。
私にも3人子供がいますので、子育ての大変さは人並みに理解しています。ただ、「保育園落ちた」から⇒「日本死ね」という思考になぜいたるのか理解できません。
待機児童問題は、日本全国一律の問題ではなくて、大都市圏や首都圏の限られた自治体の問題です。
待機児童の問題については、こちらに書きましたので、関心があればご覧ください。⇒『待機児童 規制緩和で問題は解決する?』
国会で、それぞれの議員が、匿名ブログの主張を基に質問しだしたら、いくらでも政権を糾弾できますし、我田引水の主張が展開できます。
これ以降、山尾志桜里を反安倍の若手女性論客として、マスメディアが放っておきませんでした。
その年の流行語大賞(主催ユーキャン)では、「保育園落ちた日本死ね」が新語・流行語大賞トップ10に入り、表彰されました。
そしてその場に、受賞者として山尾志桜里の姿がありました。
公平を期すため、山尾志桜里の受賞後のコメントを載せておきます。
「私がこの賞を受け取っていいのどうか、とてもためらっているのですが、声を上げた名もない一人のお母さんの言葉と、それを後押ししてくれた2万7862人の女性たちに代わって、この賞を受けとらせていただきたいと思います」
当然民主党(当時)もマスメディアの動向を理解していて、党として山尾志桜里を前面に押し立て、2016年3月の民進党結党時には、山尾志桜里を政調会長に抜擢しました。
離党の経緯
山尾志桜里が離党した経緯もつい最近のことなので、記憶にあることと思いますが、簡単にみてみましょう。
山尾志桜里の離党をズバリ言えば、『ダブル不倫を週刊誌に報じられて責任をとっての離党』ということになります。
蓮舫から前原誠司への民進党代表交代で、山尾志桜里の幹事長人事が内定していた時のできごとでした。
当然ではありますが幹事長人事は見送られ、2017年9月7日に山尾志桜里は会見の場を設け、民進党を離党します。
その会見の際、山尾志桜里は「(倉持弁護士と)男女の関係はない。」と説明しました。
『誤解を生じさせるような行動で迷惑をかけた』という離党理由に対して、普通の感覚の人であれば誰でも「なぜ?」と思ったはずです。
事実でなければ、週刊誌と徹底的に戦うべきです。やましいことがないのになぜ下を向く必要があるのでしょうか。
6分程の短い会見が終わると、山尾志桜里は記者の質問には一切応じることはありませんでした。
愛知7区とは
山尾志桜里が地盤としている愛知7区は、瀬戸市(6区に属しない区域)、大府市、尾張旭市、豊明市などを含む選挙区です。
愛知県近隣の人でないと、ほとんど聞いたこともないような市の名称ですが、地域的には名古屋市(地図の紫部分)のベッドタウン及び工業都市として発展してきた地域になります。
労働組合の力が強いからだと思いますが、中選挙区時代(1994年廃止)から非自民系の勢力が、もともと強い地域でした。
ですから状況によっては、山尾志桜里が当選する可能性は、充分にあった選挙区といえます。
山尾志桜里の当選まで
民進党を離党後、衆議院の解散という流れが報じられる中、山尾志桜里は9月22日、地元の愛知7区に帰り、尾張旭市と瀬戸市の2カ所で集会を開き、騒動の説明を支援者におこないました。
マスメディアでは、この時の様子は報道しましたが、もうほとんどダブル不倫問題について、話題を広げることはありませんでした。
山尾志桜里のダブル不倫の報道では、その直前に不倫報道されていた元SPEEDの今井絵理子参議院議員から比べると、報道自体がトーンダウンしていたと感じたのは、私だけではないと思います。
山尾志桜里は、あれだけ『保育園問題』追求で、マスメディアで持ち上げられていたわけです。
今回の不倫疑惑発覚で、今までのマスメディアであれば、「保育園に預けていたのは不倫するためだったのか」と揶揄するのが通常のパターンでした。
自民党の議員だったらそのように、面白おかしく取り上げられていたでしょう。
現に、今回新潟4区から出馬して落選した金子恵美の夫の宮崎謙介氏が不倫問題をおこした際は、国会議員の育児休暇に関しての発言を取り上げられた直後の不倫騒動だったために、そのバッシングは激しく、国会議員辞職にまで追い込まれました。
このマスメディアの報道姿勢が、今回の山尾志桜里の当選を少なからずバックアップしたことは、疑う余地がありません。
<第48回衆議院議員総選挙 愛知県第7区>
候補者名 | 政党名 | 得 票 | 得票率 |
山尾志桜里 | 無所属 | 128,163票 | 50.2% |
鈴木淳司 | 自由民主党 | 127,329票 | 49.8% |
ご覧のように得票差834票で、比例復活した自民党の鈴木淳司議員の惜敗率は、99.3%でした。
まさに、僅差の勝利です。
自民党以外の党が、愛知7区に対抗馬を出馬させていなかったことも、勝利の大きな要因です。
今までの選挙であれば、前回も前々回も共産党が候補者をたてていました。共産党は毎回およそ1万5千~2万票強の得票があります。
今回自民党とのタイマン勝負に持ち込めたのは、前原誠司や枝野幸男との関係が良好であったからでしょう。
前原誠司代表は、「目指す社会像が一致している」と、山尾志桜里に対して対抗馬を立てない意向を選挙前に話していました。
そして最後の決め手は、山尾志桜里本人の決意と行動力だったと認めざるを得ません。
正直なところ私が彼女の立場だったら、とても人前には立てません。
これは決して、嫌味や揶揄して言っているのではありません。
それだけ山尾志桜里自身が信念を持って、政治家としての職に就こうとしている証左でもあります。
選挙中は、「安倍政権を終わらせるのか否か。この7区から首相に立ち向かう議員として私に引き続きその役割を果たさせてほしい」と訴え、安倍政権に立ち向かわせてほしいという執念を見せました。
それを支持するかしないかは、また別の話になりますが。
山尾志桜里の今後
選挙において、何万票の差だろうが数百票の差だろうが、勝ちは勝ちです。
まして山尾志桜里は無所属での出馬でしたので、僅差でも負けてしまえば、比例復活もありません。
選挙で勝つか負けるかは、まさに天国と地獄です。
記事を書いている時に下記のニュースが入ってきました。
【毎日新聞 2017.10.27】
立憲民主党は27日、衆院選に無所属で立候補し当選した山尾志桜里・元民進党政調会長(愛知7区)の入党を認める方針を固めた。 党幹部が明らかにした。山尾氏は当選後、「中道リベラルの受け皿の中で、立ち位置を作りたい」と立憲入りに含みを持たせていた。
山尾志桜里の立憲民主党入りが、ほぼ確実になりました。
枝野幸男代表のもと、最高顧問に菅直人と赤松広隆が就く立憲民主党です。付け加えれば、政調会長が辻元清美。
はっきりとした左派政党であることは間違いありません。
そこに籍をおく決断をしたことで、山尾志桜里の政治家としての立ち位置が明確になったといえます。
立憲民主党入党見送り(追記)
記事アップから2日後、山尾志桜里の立憲民主党への入党が見送られたというニュースです。
【共同通信 2017.10.30】
立憲民主党は30日の執行役員会で、無所属の山尾志桜里衆院議員が同党の衆院会派に入ると確認した。入党はしないという。
立憲民主党の中にも慎重な意見があるからでしょう。
選挙で勝ったとはいえ、山尾志桜里のダブル不倫疑惑の火種が完全に消えたとはいえません。
開票日の当日、山尾志桜里の選挙事務所に週刊文春の記者が現れて、外されていた結婚指輪のことに質問を投げかけたということも、少なからず影響しているかもしれません。
立憲民主党としては、ここは慌てず時間をかけて対応していこうということでしょう。
【関連記事】⇒『山尾志桜里の不倫スキャンダルと説明責任』
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