財務省がコロナ対策の一律給付金に反対な理由 ウイルス収束後になすべきこと

一万円・給付金 法律・行政関連

人間個人においても、大きなトラブルがあった時は、自身の生き方を見直すチャンスと捉えることができます。

国家においても同様ではないでしょうか。

新型コロナウイルスの問題で、明確になった日本の課題は、中国共産党国家との付き合い方、緊急事態条項の必要性、財務省組織変革の3点です。

その中で、今回は財務省の組織変革について、考えてみたいと思います。

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一律給付なぜ消極的

安倍政権は、これ以上新型コロナウイルスの感染を拡大させないよう、4月7日東京首都圏など7都府県に、緊急事態宣言を発出しました。

その後、4月16日には、緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大しています。

国民には不要不急の外出を控えるよう要請し、職場におけるテレワークも推奨、人との接触をなるべくしないよう訴えています。

経済活動を自粛せざるを得ない環境を要請している以上、企業への助成金や個人への給付金を補償するのが、政府としての役目のはずです。

ところが、これがなかなか進みませんでした。

なぜ進まなかったのか?

ここに来て、やっとマスメディアでもその理由を取り上げるようになってきました。

【産経新聞 2020.4.18】
 <政策スピード不足 官僚の壁 一律給付に財務省反対>

首相官邸の政策決定にスピード感が欠けるのは、前例踏襲を常とする官僚が壁になっているためだ。
現金給付をめぐっては、財務省が国民全員を対象にすれば、「大企業や年金生活者など打撃のない人にも配るのは不公平だ」と主張した。官邸は一律給付が膨大な財源を必要とすることも考慮し、対象を減収世帯に限り、1世帯当たり30万円の給付に傾いた。

だが、首相が要請した全国の小中高校などの休校や外出自粛による在宅勤務で、家庭では食費など想定外の支出がかさんでいる。企業は先行きへの不安から今後の賃上げに慎重になるのは必至だ。

消費税率10%も家計の重しになるだろう。首相はこうした国民感情を重視し、緊急事態宣言の対象区域を全国に拡大したのを機に10万円の一律給付に転じた。

産経新聞

「えっ、なぜ一国の首相が、財務省の顔色をうかがわないといけないの?」

多くの人がそう思うでしょう。

でもそれが、簡単にできないくらい財務省の力は強大なのです。

膨大な財源を使いたくないのが、財務省です。


財務省の任務は、 “財政健全化” すなわち、借金をしないことなのです。

<財務省設置法>
(任務)
第三条 財務省は、健全な財政の確保、適正かつ公平な課税の実現、税関業務の適正な運営、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保を図ることを任務とする。

財務省設置法

財務省の任務の冒頭に書かれているのが、“健全な財政の確保” なのですから、財務省に言わせれば「その任務を遂行することを優先する」となります。

その結論から、今回の新型コロナウイルスの問題に対しても財務省は、できれば財政出動を少しでも抑えたいとの考えにいたるのです。

財務省の権限

財務省は、最強官庁といわれます。

なぜか?

国家の財布を握り、納税の調査を行う権限を有しているからです。

財務省は主に、国の予算編成や税制に関する制度の企画・立案をおこなっています。国債や地方債、貨幣の発行などの財政業務も含まれます。

また、財務省の外局に国税庁があり、税を集め、時には脱税に対して刑事責任を追及する調査・査察もおこないます。

予算編成

来年の予算を決める際に、最初におこなわれるのが、各省庁からの概算要求です。

各省庁からの概算要求書を査定し、ヒアリングや調整などをおこなうのが、財務省です。

先にその後の流れをいうと、概算要求書をもとに、来年度予算の原案を財務省が策定します。

これを基に政府内で予算案の最終調整をおこない、閣議決定の後に、国会に予算案が提出され、国会審議がおこなわれます。


閣議決定される前に、財務省の予算原案に対して、各省庁の官僚や国会議員が、財務官僚と交渉するわけです。

本来はこの部分を国会でおこなえば、透明性のある予算編成になりますが、閣議前のこの交渉は水面下でおこなわれ、国民には見えません。

これが与党議員のうまみになっています。

と同時に、言葉は悪いですが、財務官僚にとっては国会議員を手なずける一つの手法になっています。
予算編成で国会議員の要望を取り入れ込むことで、議員の顔を立てることができます。

税金の徴収と査察

財務省設置法の第十八条から、国税庁に関する記述があります。

<財務省設置法>
第十八条 国家行政組織法第三条第二項の規定に基づいて、財務省に、国税庁を置く。

(任務)
第十九条 国税庁は、内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現、酒類業の健全な発達及び税理士業務の適正な運営の確保を図ることを任務とする。 

財務省設置法

『賦課』とは、税金などを割り当てて負担させることで、『徴収』とは、税金などを取り立てることを意味します。

国税庁の組織内には、調査・査察をおこなう部署があります。

脱税案件に対して、強制的に家宅捜索(裁判所からの令状)をおこなうこともできます。


国税庁の主要ポストには、財務省のキャリア官僚が多くをしめています。

ちなみに現在の国税庁長官は、星野次彦長官で、財務省主税局長をへて、2019年7月からその任にあります。

【週刊東洋経済Plue 2015年2月14日号】
国税職員は採用によって、三つの階層に分かれている。上級職試験(現在は総合職試験)の合格者で財務省から出向している財務省キャリア(省キャリ)、上級職試験合格者で国税庁に採用となった国税庁キャリア(庁キャリ)、そして、国税専門官試験(大卒)と税務職員試験(高卒)で各地の国税局に採用となったノンキャリアである。

省キャリは国税庁本庁の課長以上のポストと国税局の主要なポストを独占する。庁キャリは40代以降は国税庁の課長ポストを省キャリと分け合い、その後、少数ながら国税局長になる者もいる。

ノンキャリの最終ゴールは税務署長。署長になれるのは同期のうち1割~2割だ。ノンキャリで国税局長にまで上り詰めるケースもあるがそれは極めてまれ。ピラミッド型の人事構造と、課税権を行使するという権力機構のため、国税組織は厳しい縦社会だ。

週刊東洋経済Plue

財務省変革

国民からお金を集め、その使い道を決め、時には強権を発動して、納税に関して査察もおこなうことができる組織が、財務省です。

まず、この財務省の権限を分割していく必要があります。


以前から多くの識者が提案しているのが、歳入庁の創設です。

税金や年金、健康保険や雇用保険など、社会保険料の徴収も含めて、公に徴収するお金を一括で集められるように、歳入庁をつくるのです。

官庁が縦割りで集めていたものが、一括でおこなうことができるので、効率化がすすみますし、徴収漏れもおきにくくなります。

ただし懸念されるのは、歳入庁が過去に分割された金融庁と、同様のポジションになってしまわないかという点です。

ですので、歳入庁が創設されてもやがて、財務省の単なる人事異動先の一つにならないようにすることです。


日本政府の経理部門を担当しているのが、財務省だということはわかります。

会社でいえば、経理部や経理課という位置です。

例えばある会社が、経理部の意向に重点を置き会社運営をおこなったら、どうなるでしょうか。

「そこに使えるお金はありません」
「極力経費は使わないで下さい」
「設備投資することは借金をすることなので賛成できません」

その会社は、あたらしい挑戦(投資)もできず、既存の仕事をコツコツやっていくしかありません。

これでは会社の拡大や発展は期待できないでしょう。

国家の運営が、経理担当の財務省主導のもとで続いてきているのが、現状の日本なのです。


一方、経営者としての政治家はどうでしょうか?

経理部が信頼し得る、経営理念と構想を持ち合わせている経営者となりえているかということです。

最高学府を卒業し、最難関の公務員試験を勝ち上がってきた優秀な官僚が、利権と自尊心の塊の政治家と相対した時、どのような思いになるかです。

国家公務員を目指す学生であれば、日本国のために滅私奉公するという考え方を、大なり小なり志を持っているはずです。

ところが政治を動かす政治家が、私利私欲と受け止めざるをえない言動ばかりしていたらどうでしょう。

官僚が「この人達に任せておけない」「日本の舵取りは私達がしなければならない」という思いになったとしても、不思議ではありません。


ですから、財務省だけを責めるのは、ある面アンフェアです。

国会議員が政治家としての資質をあげていく必要があります。

また国民も、優秀な官僚を生かすことのできる器量を持った政治家を、どう選ぶかという責任を、しっかり果たしていかなければならないでしょう。

財務省の制度改革ができたとしても、国民やその代表の政治家も変わらないと、本当の意味の改革にはつながらない気がします。


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