限界集落とは? 再生された事例はあるのか

老朽化・限界集落 社会問題(課題)

限界集落が舞台となるドラマ『ナポレオンの村』(TBS)が放映されたのは、2015年のことでした。

このドラマは、唐沢寿明演じる百戦錬磨の公務員が、消滅寸前の村を生まれ変わらせていく様子を描いた物語です。

ドラマには原案があり、石川県羽咋(はくい)市の公務員・高野誠鮮氏が書いたビジネス本『ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?』が、それです。

そもそも限界集落とどんな状態の集落のことをいうのでしょうか?

また、ドラマ原案の羽咋市の他にも、限界集落が再生した事例などはあるのでしょうか。

確認してみたいと思います。

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限界集落とは?

限界集落とは、高知大学の大野晃名誉教授が提唱した概念です。

定義としては、「65歳以上の高齢者が集落人口の半数を超え、冠婚葬祭をはじめ田役、道役などの社会的共同生活の維持が困難な状態に置かれている集落」のことを指します。

ここに書かれている『田役(たやく)』とは、神社や寺院の修繕などのために田地に課した税のことで、『道役(みちやく)』とは、町村内の道路や神社の草刈りや掃除のことです。


基本的に官公庁は、この限界集落という言葉は使用していません。

ちょっと言葉のイメージが悪いからでしょうか。この呼び名に抵抗を感じる人もいるようで、ある自治体では、『小規模高齢化集落』(戸数19戸以下の集落)と呼んでいる所もあります。

ただ、呼び名云々というより、こういった小規模な集落の現状をどうしようかと、自治体では頭を悩ませています。

限界集落の状況

実際、日本各地の限界集落は現在どのような状況なのでしょうか。

総務省の地域力創造グループ過疎対策室が2020年3月に、『過疎地域等における集落の状況に関する現況把握調査』の結果を発表しました。

調査は、昨年2019年9月から11月にかけておこなわれました。この現況把握調査は、4年前の2015年にもおこなわれています。

調査の対象は、過疎地域自立促進特別措置法で過疎地域に指定された地域を含む814市町村です。(一部対象外)

過疎地域の全集落数は、63,237集落でした。そのうち、10人未満の小規模集落は、2,678集落(4.2%)です。


私も田舎で生まれ育ったので、小規模集落のイメージは何となく理解できます。友達の家に遊びに行って、子供ながらに、「よくこんな(離れた)所に住んでいるなぁ」と思ったものです。

集落の人口に占める65歳以上の割合が50%以上の集落は、全体のおよそ32.2%、20,372集落で、更に、65歳以上割合が100%の集落は、956集落もありました。

限界集落の問題に関して、行政機関は真剣に取り組んでいるようですが、成功するケースはとても少ないのが現状のようです。

限界集落再生は可能か?

誤解を恐れずに言えば、そもそも小規模限界集落を再生させることなどできるのでしょうか?

自然淘汰という言葉があるように、ある面、時代に逆らえない現象のような気もします。

高齢者(65歳以上)の割合が100%の集落を考えてみても、既に30歳をこえたであろう彼らの子供達が、その集落に帰ってくる可能性ほとんどないでしょう。あと15年で皆80歳以上の年齢になってしまいます。

実際、集落人口に占める75歳以上の割合が100%の集落は、339集落もあります。 そういった集落が存続できるはずがありません。


自治体として口には出して言えないでしょうが、精一杯の住民サービスはおこなって、あとは年月が経つのを待つ以外ないと思っているのでしょう。

それは、現状把握調査の「貴市町村内の集落について、今後10年間で集落機能の維持・再編成等を行う見通しはありますか」という設問の回答結果から、推察でけます。

「行う予定はない」と回答した自治体は、74.9%もありました。

地方財政が厳しい中、限られた財源や人材で施策を行わなければならないわけですから、当然です。

このような現状を考えると、再生可能な集落と再生が困難な集落の選別をすることが、どうしても必要になってきます。

再生した限界集落

では最後に、限界集落と分類された集落が、再生した事例があるのか、確認してみます。

石川県羽咋市神子原

冒頭紹介したドラマのモデルになった地域は、石川県羽咋市にある神子原(みこはら)地区です。

2011年に作成された資料によると、神子原地区は人口506人、18年間で人口が半減、高齢率54%の地区でした。

羽咋市役所職員の高野誠鮮氏は、過疎化する原因を洗い出し、地区の人達との話し合いで事業展開をおこないます。

神子原地区には、ブランド米になり得る可能性があった神子原米があり、ローマ法王庁に働きかけ、“ローマ法王庁御用達”ブランドになったのです。

結果として、地区の人達が喜んで事業に参加し、農家一軒当たりの所得が向上しています。また、若者が移住するようにもなり、高齢化率は40%台になりました。

  【地域再生を担う人づくり情報交換会 資料

徳島県神山町

もう少し規模が大きくなりますが、徳島県神山町も成功した事例として、よくメディアに取り上げられる地区です。

神山町の人口はおよそ4700人で、高齢化率は46%(2016年)の町です。神山町には、ITベンチャーや起業家が次々と移転・移住していることで、注目されています。


仕掛けているのは、NPO法人グリーンバレーの大南信也氏です。実家が神山町の大南信也氏は、スタンフォード大学大学院を卒業しています。

「地域に根ざした取り組みは、住民主導でないと続かない」という信念のもと、国内外の芸術家を神山町に呼ぶことを考え、『アーティスト・イン・レジデンス』というプロジェクトを立ち上げます。

アーティストを招き入れることで、住民の意識が変わり、お互いが関係性を構築することで、“多様性”や“寛容性”が住民の中に生み出されていきました。

神山町が必要とする業種や起業家を逆指名して、移住を促すプログラム『ワーク・イン・レジデンス』もスタートさせました。 【RECRUIT 2018.1.31】


二つの地域に共通しているのは、一人の人物のリーダーシップです。

やはり何か新しい試みをする際には、創造力と行動力があり、人間的魅力を兼ね備えた人物が必要不可欠です。

更には、その取り組みをシステム化することや人材育成をしっかりすることで、事業を継続化していくことが理想です。

二つの事例をあげましたが、日本全体で見れば、限界集落の再生は簡単なことではありません。

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