「選挙ってこんなことしていいの?」
具体的な法律内容はわからなくても、何となくそんな思いをもったことはありませんか。
選挙に立候補する人の場合は、事前に選挙運動に関する法律を理解していて当然ではあります。
にもかかわらず選挙が終わると、必ずといっていいほど逮捕者がでます。
選挙違反と分かっていてもバレないと思ってやったのか、知らずにやってしまったのかわかりません。
いずれにしても議員や首長を目指す人としては、あきらかに失格です。
「私は立候補しないから関係ない」と思っても、有権者であれば選挙にまったく関わりにならないということは、まずありません。
今回は有権者として選挙違反をしないために、知っておきたい事をまとめてみます。
更に、立候補者がおこなう選挙運動のどんな点を、一般有権者が正しく監視するべきか調べてみます。
公職選挙法
選挙に対しての色々な取り決めをした法律を、公職選挙法といいます。
公職選挙法の第一条にはこう書かれています。
第一条 (目的)
この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。
公職選挙法
選挙をおこなう際に、『公明且つ適正に行われることを確保』することに重点をおいて、法律がつくられています。
では、具体的な公職選挙法違反について確認してみます。
事前運動
まず、事前運動に対する選挙違反についてです。
国会議員を決める選挙も地方議員を選ぶ選挙においても、選挙期間が決まっています。選挙運動は、この決められた期間以外はおこなってはいけません。
この期間以外におこなってしまう選挙運動のことを、事前運動といいます。
第百二十九条
選挙運動は、各選挙につき、それぞれ第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項の規定による候補者の届出、第八十六条の二第一項の規定による衆議院名簿の届出、第八十六条の三第一項の規定による参議院名簿の届出(同条第二項において準用する第八十六条の二第九項の規定による届出に係る候補者については、当該届出)又は第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項の規定による公職の候補者の届出のあつた日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない。
公職選挙法
『候補者の届出のあつた日』というのは、選挙の公示日(または告示日)のことです。
公示日(または告示日)から、投票日前日までが選挙期間ですので、それ以外の選挙運動は事前運動で法律違反です。
これに違反すると「一年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金」が課せられる可能性があります。
でも素人からすると「選挙運動と政治活動はどう見分けたらいいの?」という疑問がわきます。
東京都の選挙管理委員会事務局では、この二つの違いをこう表現しています。
【選挙活動】
特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかることを目的に投票行為を勧めること。【政治活動】
東京都選挙管理委員会事務局
政治上の目的をもって行われるいっさいの活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの。
選挙期間以外で、「(特定の選挙に)ゆくゆく立候補するので応援してほしい」という活動はできないということです。
戸別訪問
選挙期間中に、戸別に訪問して投票をお願いすることは、禁止されています。
第百三十八条
何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて戸別訪問をすることができない。
2 いかなる方法をもつてするを問わず、選挙運動のため、戸別に、演説会の開催若しくは演説を行うことについて告知をする行為又は特定の候補者の氏名若しくは政党その他の政治団体の名称を言いあるく行為は、前項に規定する禁止行為に該当するものとみなす。
公職選挙法
ここに『何人も』と書かれているように、立候補者でなくても投票依頼の行為は禁止ということになります。
もし選挙期間中に投票依頼の訪問を受けたら、公職選挙法違反であることをしっかり伝えましょう。
買収行為
買収行為に対しては、もう常識的に知っている人がほとんどかと思いますが、お金や物品を受け取ることは、禁止されています。
第二百二十一条
一 当選を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与、その供与の申込み若しくは約束をし又は供応接待、その申込み若しくは約束をしたとき。
公職選挙法
例えば、あたたがある候補者の選挙応援に行ったとします。
そこで候補者や選挙事務所の人から、応援のお礼と称してお金や物品を受け取ってはいけません。
渡そうとされたら辞退するのが正解ですし、選挙違反として指摘した方が良いです。さらに言えば、その候補者が本当に応援すべき人物なのか考える必要があります。
ただし、選挙活動でお金を受け取ることができる人は存在します。
選挙事務所で事務をおこなう人や、車上運動員と位置付けられたドライバーやウグイス嬢たちです。
あらかじめ登録申請したこれらの人達には、上限のある日給を支払うことが認められていますので、買収行為にはあたりません。
ポスターについて
毎回どの選挙でも、地域の決まった場所に、ポスター掲示板が設置されます。
よく町中に政治家のポスターが貼ってありますが、選挙期間中に、この掲示板以外の場所に貼ってある政治家のポスターは、関係者が事前に剥がしておかなければなりません。
選挙期間中、ポスター掲示板以外に貼ってもよいポスターは、政党名(党首写真可)のポスターと衆参両院選挙の比例代表候補のポスター(要認証シール)です。
掲示板のポスターや政党ポスター等を剥がしたり棄損する行為は、選挙違反です。
第二百二十五条(選挙の自由妨害罪)
選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。
二 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。
公職選挙法
メール
2013年の参議院選挙から、選挙期間中のインターネット上での活動が認められるようになりました。
公職選挙法が改正されたためです。
それ以前は、選挙が始まってしまうと政治家は、HPやブログなどの更新を一旦ストップしなければなりませんでした。
公職選挙法が改正されることによって、政党や候補者は、インターネット上の発信を選挙中も続けることが可能になりました。
ただし、有権者においては、現在も電子メールでの選挙運動は、禁止項目になっています。
有権者が候補者からのメールを受け取って、その内容を知人にシェアしようとメール転送することは、NGです。
また、選挙運動ができるのは18歳以上ですので、18歳未満の子供はメールに限らず、選挙運動をおこなってはいけません。
第百三十七条の二
年齢満十八年未満の者は、選挙運動をすることができない。
2 何人も、年齢満十八年未満の者を使用して選挙運動をすることができない。ただし、選挙運動のための労務に使用する場合は、この限りでない。
公職選挙法
労務とは、事務仕事一般のことですので、ビラの証紙シールを貼ったり、選挙用のハガキの宛名書きを手伝ってもらうことはできます。
以上、選挙運動におけるいくつかの違反事例を確認してみました。
少しずつ知識を増やして、自分が選挙違反をしないよう心がけたいものです。
また立候補者や運動員が選挙違反をしないように、有権者が選挙運動を監視することも、公正な選挙をするうえで必要なことです。
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