公職選挙法には、選挙期間以外で、事前に選挙運動することを制限した取り決めがあります。
もしこれに違反すると、「一年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金」を課せられることになります。(公職選挙法・第239条)
では、『事前運動』とはどのようなことをいうのでしょうか。
また、選挙活動と政治活動の違いについても確認してみたいと思います。
選挙運動期間
公職選挙法の第129条には、選挙運動の期間として、
「公職の候補者の届出のあった日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない」
とあります。
わかりやすく言えば、選挙の公示日(または告示日)に立候補を届け出てから、投票日の前日までの期間ということです。
ちなみに、選挙のニュースの際に、公示日と告示日という言葉がでてきます。
これはどちらも「選挙の期日を公に告知する日 」という意味ですが、選挙の種類によって使い分けられています。
公示日は、衆議院と参議院議員選挙で使用され、その他の選挙では告示日が使われます。
衆参の選挙の公示は、天皇陛下の国事行為としておこなわれ、その他の選挙は選挙管理委員会が告知するという違いがあるからです。
選挙運動について総務省では、
「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」
と定義付けています。
選挙の事前運動に注意
例えば、次の市議会議員選挙に立候補することを考えて政治活動している人物が、「来年の選挙に出ようと思っているのでご支援よろしくお願いします」などと、どこかの集会でいってしまったら、これは選挙の事前活動になってしまい、公職選挙法違反になります。
本当に立候補を考えている人は、この辺のことを選挙管理委員会などに問合せて、事前に理解していないと、せっかく立候補 → 当選しても、公職選挙法違反で、足元をすくわれる可能性があります。
当然これは、インターネット上でも同じで、ややもするとネットの世界では軽く考えてしまいがちですが、注意が必要です。
選挙活動と政治活動
この『選挙活動』と『政治活動』との関係は、大きな意味での『政治活動』の中に、『選挙活動』があるわけです。 これをはっきり区別する理由は何なのでしょうか?
多くの自治体のHPでは、以下のような趣旨の説明がされています。
「常時選挙運動が行われることによる不正行為の発生を抑え、選挙運動を同時にスタートさせることにより各候補者の無用の競争を避け、また、選挙運動費用の増加を避けることなどの理由により禁止しているものです」
選挙運動期間をはっきり設けることで、無用な競争をさけ、不正行為の発生をおさえ、運動費用の増加を抑制するためということです。
たしかにそういう部分もあるのでしょうが、何か腑に落ちません。現職議員が有利になっているような感じをうけます。
私自身、短い期間ですが議員の秘書をした経験があります。
選挙区内では、商店会や自治会など様々な団体の会合がありますし、また色々なイベントがあります。
現職議員が顔や名前を売り込む機会は数限りなく存在していますが、新人(次回の選挙立候補者)の場合、そうはいきません。
可能な限り選挙運動期間(「次の○○選挙に出る予定です」と訴えられるという意味での期間)を自由にして、その分、やってはいけないことを厳格に決めた方が、もっと開かれた政治、身近な政治になるのではないでしょうか。
東京都知事選前の演説(特別追記)
問題になっている演説があります。
2024年6月2日にJR有楽町駅前でおこなわれた蓮舫氏の演説です。
東京都知事選挙(2024年7月7日投票日)を間近に控え、立候補を表明した蓮舫氏と枝野幸男氏が熱く聴衆に語りかけました。
それが以下の内容です。
「皆さんの力で知事に当選させていただきたい」(枝野)
「あなたの力がなければこの選挙は勝ち抜けません」(枝野)
「七夕に予定されている東京都知事選挙に蓮舫は挑戦をします」(蓮舫)
「皆さんのご支援どうかよろしくお願いします」(蓮舫)
「あれ?、都知事選始まってる?」そう思ってしまう演説です。
判例によると選挙運動とは、「特定の選挙について特定の候補者の当選を目的として投票を得、または得させるために直接または間接に必要かつ有利な行為」とされています。
2024年の東京都知事選挙の告示日は6月20日です。
『七夕の東京都知事選』『東京都知事選挙に蓮舫は挑戦します』『知事に当選させていただきたい』、政治信条うんぬんは置いておいて、これらの演説は誰が聞いても “選挙運動” 以外の何ものでもないと思いますが、いかがでしょう。
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