ここ最近、少年の凶悪犯罪のニュースをあまり見聞きしません。
報道されないからといって、少年犯罪がなくなっているはずもなく、大人が眉をひそめるほどの凶悪犯罪が、今のところないということかと思います。
直近で私が思いうかぶ少年の凶悪犯罪といえば、2015年2月におこった川崎市中1男子生徒殺害事件です。
この時の加害者は、18歳の少年と2人の17歳の少年でした。
【日本経済新聞 2015.2.20】
川崎市川崎区港町の多摩川河川敷で男性が倒れているのを通行人が見つけ、110番した。神奈川県警川崎署によると、男性は死亡しており、首に切られたような傷があった。署は死体遺棄容疑で捜査を始めた。署によると、男性は全裸で、10~20代とみられる。
日本経済新聞
ちなみに、既に裁判は結審していて、主犯格の18歳(事件当時)の少年には、懲役9年以上13年以下の不定期刑が決定しました。
このような事件がおこると、必ずででくるのが、「今までの少年法で良いのか」という議論です。この当時も間違いなく、その話題がでたはずです。
そして現在、最も注目されるのが、18歳から19歳を、今後も少年扱いするかどうかという観点です。
少年犯罪の状況も含めて、少年法改正の現状を確認してみたいと思います。
少年法とは
少年法は、昭和23年(1948年)にGHQ(連合国軍総司令部)の指導下で、制定されました。
罪を犯した未成年者(20歳未満)に、成人同様の刑事処分を課すのではなくて、保護更生のための処置を下すことが規定されているのが、少年法です。
【少年法】
少年法
第一条 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。
長らく少年法改正は行われませんでしたが、2000年と2007年の改正では、処分における対象年齢の見直しがなされ、2014年には懲役刑の引き上げがなされました。
少年法改正の議論
私も少年法の見直しは必要であると思います。
ただ、ちょっと気になるのが、少年犯罪の議論をするときに必ず出てくる、
「近頃、少年の犯罪が増えているので…」
「最近、少年犯罪が凶悪化しているから…」という発言です。
本当にそうなのでしょうか?
たしかに少年犯罪に限らず、テレビのニュースを見れば、殺人事件・ストーカー事件・振込め詐欺・暴力事件が、嫌というほど毎日報道されています。
これだけ見ていると、まるで犯罪大国です。
しかし、人口比率でみれば、日本は他の国と比べて犯罪が少ない方であることは、多くの人が理解しているところでしょう。
少年犯罪についても同様のことがいえる可能性がありますので、次の項目で確認してみます。
少年犯罪の増減
少年犯罪の増減については、以下の犯罪白書のグラフを見て下さい。
見れば誰にでもわかるように、少年の犯罪件数も人口比率でも、減少傾向にあります。
ですから、「近頃、少年の犯罪が増えているので…」は、明らかに間違いとなります。
マスメディアが少年犯罪をどう報道するかによって、人々の印象が変わります。
それによって、年々減少傾向にある少年犯罪があたかも、増加の一途をたどっているように、印象付けられてしまうのです。
少年犯罪の凶悪化?
では、“凶悪化”についてはどうでしょう?
これは、凶悪の定義や人の受取り方によるところが大きいので、単純な比較はできないかと思いますが、以下のサイトは管賀江留郎さんがまとめてくれているサイトです。
昭和の時代、ざっと見ただけでも少年犯罪の山、山、山…。平成に入り徐々に少年犯罪が落ち着いてきた印象はあります。
やはり、「最近、少年犯罪が凶悪化しているから…」も、ちょっと違うんじゃないかという感じです。
だからといって、2015年におきた川崎の事件が凶悪犯罪であることは、否定できません。
要するに、比べるものが間違っているのです。
個別の事件は別として、過去と比べて少年犯罪は、数も質も決して悪くなってはいないのです。
データを無視した発言によって、その本質的な主張までも胡散臭くなってしまうことが、もったいないです。
『文部科学省が進める道徳の教科化で何が変わる』
少年犯罪を減らすために
では減少しているから、このままでいいのか?
そんなわけはありません。
犯罪はなくならなくても、限りなく“0”に近づけていく努力は必要です。
そのための少年法の改正は、犯罪の抑止となる一つの方法でしょう。
もう一度、『少年による刑法犯等 検挙人員・人口比の推移』のグラフを見てみましょう。
赤い線の成人人口比と比べると、少年による犯罪人口比は明らかに多くなっています。
それでも近年では、その差が徐々になくなっていますが。
大人と比べて、未成熟で善悪の判断が劣る少年が、幼さから犯罪に手をそめてしまうのもある面、仕方ありません。
まだまだ、少年人口比を減らしていくことは可能です。
少年犯罪を減らしていくには、二つのアプローチが考えられます。
それは、教育面と法律の厳罰化です。
厳罰化でいうなら、やはり18歳と19歳を、少年という枠組みから外すという点かと思います。
しかし厳罰化以上に重要と思われるのが、子供への教育であり、家庭環境の改善です。
少年犯罪の内容を見てみると、圧倒的に窃盗が多く、犯罪全体の6割をしめています。
少年の窃盗は、多くがいわゆる“万引”きであり、他には自転車やバイクの窃盗などになります。
ある面、非行の入り口といってもいいかもしれません。
仲間内で一緒におこなう万引きが徐々にエスカレートして、罪の意識が薄れ、やがて暴行・傷害などの犯罪へと発展していきます。
この窃盗件数を減らすことが、少年犯罪の芽を摘んでいく大きなポイントです。
家庭のあり方、親子関係、離婚による子供への影響、貧困家庭への支援問題など、問題へのアプローチは多岐にわたります。
未来を担う少年の犯罪を減らしていくことは、大人達の大きな責任です。
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