なぜ外国人が生活保護を受けられるのか? 最高裁判決の内容を確認してみた

外国人労働者3 法律・行政関連

あなたの身近な人で、行政から生活保護を受けている人はいるでしょうか。

現在日本では、163万5,515世帯(208万9,641人)が、生活保護を受けています。(平成31年2月現在)

個人的には、「意外に多いんだなぁ」という感想を持ちました。


その中に、外国人も含まれていると聞くと、どんな感想を持たれるでしょうか。

「外国人でも生活が困っているなら仕方ないのではないか」という考えもあれば、「外国人にまでお金をだしていたら日本が大変でしょ」という反対の意見もあるでしょう。

生活保護の支給は、生活保護法に則ってなされていますが、本来は日本国民の特権です。それなのになぜ外国人も対象となり、生活保護費が支払われているのでしょうか。

法律の確認、厚生労働省の見解、過去の裁判内容なども含めて、外国人の生活保護受給問題について調べてみます。

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生活保護法の目的

生活保護については、生活保護法という法律があります。

生活保護法は1950年に制定されました。
法律の目的として、第一条にこう書かれています。

<生活保護法>第一条

「この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」

生活保護法

日本国憲法第二十五条には、どんなことが書かれているかというと、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」です。

この理念に基づいて生活保護法が制定され、そして、生活保護法の対象は、あくまで『生活に困窮するすべての国民』ということが大前提です。

厚生省(現・厚生労働省)の通達

生活保護法に、国民が対象と書かれているにもかかわらず、外国人に生活保護費が支払われているということは、どういうことなのでしょうか?

実は1954年(昭和29)年5月8日に、当時の厚生省社会局長名で、ある通達が出されたためです。

そこにはこう書かれています。

「一 生活保護法(以下単に「法」という。)第1条により、外国人は法の適用対象とならないのであるが、当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて左の手続により必要と認める保護を行うこと。」

生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について

通達が出されたのが、戦後から10年も過ぎていないことから、貧困する外国人というのが、普通に入国してきた外国人でないことは明らかです。

対象は、ほぼ間違いなく在日朝鮮人です。

1954年に “当分の間” といわれてから、半世紀どころではない既に65年以上が経っているのです。

しかし今もってこの通達を根拠にして、生活に困窮する外国人への生活保護がおこなわれています。

国会での質疑

このことに対して、政治家はまったく問題にしてこなかったのでしょうか。

過去において、何人かの国会議員が国会質問した事例はあります。

例えば、減税日本の佐藤夕子議員(当時)は、2011年12月に「日本国民を対象とするものであるにもかかわらず、被保護人員の中には多くの外国人が含まれる」と指摘し、通達に従わず地方自治体が「外国人に対する生活保護の準用を行わないことは可能か」と質問しています。

これに対しての答弁は、「社会保障制度の多くは、それぞれの要件が満たされる場合には、外国人であっても制度の対象としているところである」というものでした。


また、維新の会(当時)の丸山穂高議員が、国会の厚生労働委員会で、この問題を取り上げました。

【夕刊フジ 2019.4.27】
丸山氏は「外国人の生活保護」問題にも切り込んだ。
1950年に制定された生活保護法は、対象を「生活に困窮する国民」に限っているが、厚生省社会局長名で54年5月に出された通達によって外国人にも支給されている。あくまで人道的観点から“当分の間”出されたものだ。

ところが、厚労省によると、2019年1月末で約4万6000世帯(約6万8000人)の外国人が受給している。直近5年では、朝鮮半島出身者の受給世帯数が3・2%、中国は15・2%も増えているという。

丸山氏は「この景気で、なぜ受給者が増えるのか? 生活保護法第2条には『すべて国民は』とあり、国民に限定している。外国人への支給は法律の趣旨を超えている。社会保障費全体が厳しいなか本当に続けるのか、きちんと議論して、法改正も含めて結論を出すべきだ」と語った。

夕刊フジ

結局、質問しているのは小さな野党の国会議員です。

政権与党の国会議員が本気で取り組もうとしないかぎり、この外国人生活保護問題は何も変わりません。

外国人の生活保護費受給状況

外国人労働者2

現在の外国人生活保護受給状況については、厚生労働省の資料からもなかなか見つけることができませんでした。

少し古い記事ですが、新聞記事の一部を載せておきます。

【産経新聞 2018.5.3】
生活保護を受けている外国人が平成28年度に月平均で4万7058世帯に上り、過去最多に達したとみられることが2日、政府の調べで分かった。
また人数ベースでみても外国人が世帯主の世帯による生活保護の受給は大幅に増えている。 

28年度は月平均7万2014人と、18年度の4万8418人から48・7%多くなった。 一方、在留外国人全体の人数の増加率は19年末から29年末にかけての10年間で23・8%にとどまっている。

産経新聞

本来、日本国民を対象にした生活保護法です。

それに対して、7万人をこえる外国人がその恩恵を受けているという現実があります。

あれだけ「国の借金が!借金が!」と言いながら、こういったところにメスを入れないのはおかしい気がします。

最高裁判決の意味するもの

外国人生活保護問題が裁判で争われ、2014年の最高裁判決をめぐって一時期、おおいに議論されたことがあります。

新聞記事からの抜粋です。

【産経新聞 2014.7.18】
永住資格を持つ中国人女性が、生活保護法に基づく申請を却下した大分市の処分の取り消しなどを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は18日、「永住外国人は生活保護法の適用対象ではない」との初判断を示した。

その上で、永住外国人も生活保護法の対象になると認めた2審福岡高裁判決を破棄、女性側の逆転敗訴を言い渡した。
4裁判官全員一致の結論。永住外国人らには自治体の裁量で生活保護費が支給されているため、直接的な影響はないとみられる。

産経新聞

この裁判の判決の一文に、「外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり、生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、同法に基づく受給権を有しないものというべきである。」という文言がありました。

これをもって、『最高裁で違憲とされた』という主張をする人達がでてきたのです。

ただし、この主張は、判決文全文を読むと、間違いであることに気づきます。

なぜ中国人の女性が敗訴したのかというと、生活保護の申請内容に問題があったからです。

再申請後の平成23年(2011年)10月26日からは、申請に基づいて生活保護の措置が開始されているのです。

要するに、10月26日前の生活保護申請分は認められなかった(敗訴)ということになります。


最高裁の判決は、厚生労働省の見解と何ら変わっていないということです。

永住外国人に対して、申請に基づいて日本人と同等に、生活保護法に準じた保護をおこなうことは、違法ではないという考えです。


結局、この外国人生活保護問題に触れることは、『人道問題』に踏み込まないといけない問題であり、特別外国人永住者(いわゆる在日朝鮮人)が関わってくる問題になります。

そうなると、国会議員は与野党問わず、関わりたくないというのが本音のところなのでしょう。

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