“マインドコントロール” の定義や意味は何か? 安易に使い過ぎていないか

世間の話題・雑記

だいぶ前の話ですが、マックでしばし休憩していると近くで大学生の会話が自然と耳に入ってきました。

「俺、マインドコントロールにかかりやすいんだよね」

「オウム真理教の信者だって、東大とか京大のエリートだったでしょ? それでもマインドコントロールにかかるんだから恐いよね。」

「バイトだってそうじゃん。店長にうまく話しされて。お客様第一っていう考えだって(マインドコントロールされている)、そういうことでしょ。」

ちょっと笑ってしまいそうになりました。

本当に恐いですね。

それは、『マインドコントロールされること』が恐いという意味ではありません。

『言葉の定義を曖昧にして言葉を使うこと』が、恐いという意味でです。

大学生の会話の内容で考えれば、子供の教育も会社の研修も、すべてマインドコントロールという事になります。

TVのコメンテーターや芸能人もよく使います。

果たして彼らが明確な定義付けのもとで、この “マインドコントロール” という言葉を使っているかといえば、とてもそうは思えません。

マインドコントロールは誰が言い始めた言葉なのでしょうか?

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マインドコントロールとは?

この “マインドコントロール” という言葉は、米国の心理学者のマーガレット・シンガーが提唱したものです。

しかし米国心理学会の社会的倫理的責任委員会は、この理論に対して『科学的厳密さに欠ける』と却下しています。

学会として一つの見解を出すことができないという意味かもしれませんが、定義があいまいであることに変わりはありません。

その後、日本にはどういう経緯で入ってきたのかはわかりません。

ただ米国の大本の理論が学会内において認められていない訳ですので、輸入されてきたこの “マインドコントロール” という言葉が、あやふやなものであるのも頷けます。

私個人としては、“マインドコントロールされる” と聞けば、とてもネガティブな嫌な気持ちになります。

実用日本語表現辞典では、こう説明しています。

【weblio辞書(実用日本語表現辞典)】
他人の心理状態を制御して特定の意思や目的へと誘導することを指す語。暴力や強い精神的圧力などの強制的手法を取らない点で洗脳とは異なるとされる。

weblio辞書

定義付け不明マインドコントロール

『マインドコントロール』で検索して意味を調べてみても、“ 他人を自分の意思で動かす ” “ 無意識に人を操る ”というレベルでのマインドコントロール論を語っているサイトが多いです。

いわゆる『マインド』と『コントロール』をそのまま和訳した言葉のレベルです。

先ほど確認した実用日本語表現辞典の解説もそうでした。

または、“カルト宗教や怪しい集団の思考・感情操作” という話に限定した考え方のサイトが見られたりします。

どうも腑に落ちる定義付けや説明が見当たりません。

それも上記の理由から、当然といえば当然です。

西田公昭教授の論

立正大学心理学部の西田公昭教授は、新聞やテレビなどでも活躍されている心理学研究の専門家です。

立正大学のHPで西田教授は、マインドコントロールについてこう述べています。

「マインドコントロールとは、本人が気づかないうちに他人が誘導して心理操作することです。身体拘束や暴力的な脅迫をともなう『洗脳』と違い、コミュニケーションの中で行われるのが特徴です」

立正大学 社会心理学科

マインドコントロール=他人が誘導する心理操作ということです。

他者が人を説得・教育するのも誘導といえますので、この論では社内研修やセールスなど、ほとんど何でも当てはまってしまいます。

「マインドコントロール自体は多様な場面で行われることが想定されますが、特定の宗教と結びついて利用されることがあります」

立正大学 社会心理学科

何にでも当てはまることを認めるように、『多様な場面で行われることが想定』書いていますが、最後に『特定の宗教に利用される』と結んでいます。

この結論のために、マインドコントロールという言葉を使っているような気もします。

実際、西田教授は、日本脱カルト協会代表理事についていますので、新興宗教にマインドコントロール論を適用しやすいということかもしれません。

「マインドコントロールは、通常と何ら変わりのないコミュニケーションの中で本人の気づかないうちに行われるものです」

立正大学 社会心理学科

ここでも『本人が気づかないうちに』と書かれています。

本来の意図を隠して相手の心理を誘導することが、西田教授のいうマインドコントロールだと、私的には理解しました。

この表現が正しいとすると、その心理誘導に “悪意” が存在するかどうかがポイントなのかもしれません。

しかし、この “悪意” を何の基準で悪意と決めるのか、人によっては恣意的な判断をしかねません。

日常会話として

確認してきたように、マインドコントロールの定義は曖昧です。そして言葉のイメージは、とてもネガティブに聞こえます。

マインドコントロールは、日本ではTVでも日常会話でも、普通に使われている言葉となっていますので、今後もそれぞれが自分の都合で使い続けていくのでしょう。

ある人は、“心をコントロールすること” として、またある人は、“暴力を伴わない洗脳” として。

知らずに使っているいい加減なこの類いの言葉は、他にも結構あるのでしょうね。

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