ボクシングの計量はいつおこなわれる? 階級と前日計量の関連性

計量・体重計 スポーツ

11月7日、ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級決勝戦で、井上尚弥がフィリピンのノニト・ドネアを下し、見事チャンピオンになりました。

井上尚弥が今度は、どんなステージでどのような戦いを見せてくれるのか、興味はつきません。

その井上尚弥に対して、必要以上に挑発をし続けてきたメキシコの悪童ルイス・ネリが、また試合前の計量で失格になったというニュースです。

【THE ANSWER 2019.11.23】
ボクシングのWBCシルバー・バンタム級タイトルマッチは22日(日本時間23日)、前WBC世界同級王者ルイス・ネリ(メキシコ)が前日計量に臨んだが、上限を1ポンド(約450グラム)オーバーでクリアできず。一発クリアした元IBF同級王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトルコ)が試合を拒否したため、注目の一戦は中止となった。

THE ANSWER

記憶にある人も多いかと思いますが、ルイス・ネリには、計量失敗の前科があります。

【サンスポ 2018.3.1】
プロボクシングのダブル世界戦の前日計量が28日、東京都内で行われ、WBC世界バンタム級王者のルイス・ネリ(23)=メキシコ=がリミットの53・5キロをパスできず失格となり、王座を剥奪された。

1回目の計量は2・3キロ超過した55・8キロ、再計量でも1・3キロオーバーした。前王者の山中慎介(35)=帝拳=は53・3キロで一発パス。試合は強行され、山中が勝てば王座復帰、負けか引き分けなら王座は空位となる。

サンスポ

この時は試合が行われ、結局、山中慎介がネリの重たいパンチをうけて、KO負けとなってしまいました。

ボクシングやキックボクシングなどでは、度々計量失格のニュースが伝えられます。

ボクシング漫画の「あしたのジョー」では、ジョーのライバルの力石徹が、過酷な減量に耐える場面がでてきますが、果たしてボクシングの減量とは、どのようなもので、計量はいつ行われるのでしょうか。

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ボクシングの階級制

ボクシングは階級が細かく分かれているスポーツです。

ボクシング団体の階級を確認してみましょう。

  1. ミニマム級 105ポンド(47.62キロ)以下
  2. ライト・フライ級 105~108ポンド(48.97キロ)
  3. フライ級 108~112ポンド(50.80キロ)
  4. スーパー・フライ級 112~115ポンド(52.16キロ)
  5. バンタム級 115~118ポンド(53.52キロ)まで
  6. スーパー・バンタム級 118~122ポンド(55.34キロ)
  7. フェザー級 122~126ポンド(57.15キロ)
  8. スーパー・フェザー級 126~130ポンド(58.97キロ)
  9. ライト級 130~135ポンド(61.23キロ)
  10. スーパー・ライト級 135~140ポンド(63.50キロ)
  11. ウエルター級 140~147ポンド(66.68キロ)まで
  12. スーパー・ウエルター級 147~154ポンド(69.85キロ)
  13. ミドル級 154~160ポンド(72.57キロ)
  14. スーパー・ミドル級 160~168ポンド(76.20キロ)
  15. ライト・ヘビー級 168~175ポンド(79.38キロ)
  16. クルーザー級 175~200ポンド(90.72キロ)
  17. ヘビー級 200~無制限

ご覧のように、17階級もあります。

「ちょっと細かくわけすぎじゃない」と、普通の感覚だと思ってしまいませんか?


ボクシング界の言い分としては、体重差によってパンチ力に大きな違いがあり、選手を(打撃の影響から)守るために、細かく階級を分けているということだろうと思います。

日本ボクシングコミッションのHPには、こう書かれています。

ボクシングの試合では公平を期すために、できるだけ近い体重の選手同士が戦うということがルールで決められています。

日本ボクシングコミッション

商業的な観点でみれば、それぞれの階級にチャンピオンがいるので、△△級タイトルマッチという試合を、多く組むことができます。

ボクシングは、世界タイトル戦以外、一般人からはほとんど注目されませんし、通常の試合では集客力もありません。

階級を増やすことで、その辺を補っている部分もあるといえます。

ボクシングにはメジャーな団体が4つあります。
WBA、WBC、IBF、WBOの4団体です。

それぞれの団体の各階級にチャンピオンがいますので、17×4=64人の世界チャンピオンが存在していることになります。

減量の厳しさ

ボクシング選手は、通常時の体重と試合での階級(体重)では、重さに結構な差があります。

これは個人差にもよりますが、通常時の体重より10㎏以上も減量して、ボクシングの試合にのぞむ選手もいます。


ボクシングでは、試合前日に計量が行われますので、計量が終われば、相応の栄養をとって、体力を回復させます。(IBFは当日計量も行う)

後ほどふれますが、ボクサーによっては水分も断つので、計量後に水分を取ると、スポンジが水を吸収するように、身体に吸い込まれていき、あっという間に体重も増えていきます。

試合当日はプラスαの体重で戦うので、その階級って意味あるのと、素人感覚では言いたくなります。

このことに対する回答を、元世界スーパーウェルター級チャンピオンの輪島功一氏が、このように語っています。

「減量っていうのは自分よりも小さい相手、やりやすい相手と戦うためにするもの。だから減量がつらいとかは言い訳になるから言うなと。

自分が勝つために、僕はリーチがなかったから戦える相手とやるために減量した。減量というのは勝つためにやるもの。」

[Sportie.com]

輪島氏は、通常時の体重が、87㎏以上あったといいます。

これを69.85㎏(スーパーウェルター級)まで落とすということですから、試合前には17㎏以上の減量をおこなっていたことになります。

また、先ほどの記事(輪島氏)には、元日本スーパーフライ級チャンピオン戸部洋平氏のインタビューもあります。

それによると、戸部洋平氏の通常の体重は63㎏で、スーパーフライ級の52.16㎏まで、体重を落としていたそうです。

やはり、10㎏以上の減量をしていたのです。


ボクシング業界には、『水抜き』という用語があります。

これは、食事制限後に完全に水を断って、身体から出せる水を可能な限り出すことをいいます。

サウナで汗を出したり、唾も飲み込まずに吐き出します。

ボクサーでない人から見たら異常に感じられる減量ですが、輪島氏の言葉でいえば、「勝つためにやるんだから、辛いなんていうな」ということなのです。

試合前の計量を、前日におこなうことが変わらない限り、現状のボクサーの減量方法も変わらないでしょう。


実は、1994年4月以前は、当日計量がおこなわれていたのです。

ただ試合本番までに、体力を回復させるのが難しいという理由もあって、前日計量になった経緯があります。

ん~、ベストの動きができる体重まで減量するのでは、ダメなのでしょうか。
皆がみんなそうしたら、平等だと思うのですけれど、素人考えですか?

と思っていたら、こんな動きがあるようです。

【Boxing News 2019.12.3】
WBOの年次総会が3日、東京ドームホテルでスタートした。WBOのフランシスコ・バルカルセル会長は当日計量の導入を考えており、総会の議題に挙げることを明らかにした。

当日計量は安全管理上の理由から。同会長は「当日にどこまで戻していいのか、(契約体重の)10%、8%といった議論はあると思うが、当日計量が(事故の)何らかの解決策になるのではないかと思っている」と説明した。

当日計量は主要4団体のうちIBFが実施しており、試合当日朝の体重をリミットから10ポンド(4.53)以内と制限している。当日計量を設けることで、対戦相手との大幅な体重差を作らないという狙いがあり、無理な減量を防ぐという側面もある。

Boxing News

計量失格

ボクシングの計量は、先ほど書いたように、前日に行われます。

1度目の計量でクリアできなかった場合、2時間猶予が与えられ、その時間内であれば何度でも計量を行うことは許されています。

チャンピオンが前日計量で失格になると、王座ははく奪されます。

計量が失格になると、選手陣営間の協議により罰金(ファイトマネー没収など)が科された上で、制限体重が変更され試合が行われることが多いようです。


山中慎介は、興行の成立を優先させて、計量失格のルイス・ネリの挑戦を受けましたが、今回のエマヌエル・ロドリゲスは、対戦を拒否したという違いがあります。

計量を失敗するということは、プロとして失格です。
『水抜き』をしても落とせない体重であれば、階級を上げる判断をすべきです。

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