衆議院選挙の比例復活と惜敗率の関係 過去の事例を調べてみる

政治・経済関連

衆議院選挙の仕組みでよく批判されるのが、“比例復活”です。

比例復活というのは、小選挙区で敗北した候補者が、比例代表の名簿順位で上位に位置し、惜敗率が高い候補者の順に当選する仕組みです。


「選挙区で負けたのに比例代表で当選するのはおかしい」と言いたい気持ちはわかります。

でも、それを認めているのが現状の選挙制度ですから、仕方ありません。

小選挙区で一度落ちて(死んで)、比例代表で当選(生き返る)した議員のことを揶揄して、“ゾンビ議員” と言う人もいます。

この “ゾンビ議員” の存在をなくすためには、できるだけ多くの有権者が声をあげて、選挙制度を変えるしかありません。

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惜敗率とは

惜敗率とはどうやって算出するのでしょうか。

例えば、ある小選挙区で自民党の議員が10万票で当選し、立憲民主党の議員が9万票で落選したとします。

この場合、9万÷10万×100=90となるので、立憲民主党の議員の惜敗率は90%となります。

名簿順位が同じ場合には、この惜敗率が当落に大きく関わってきます。

名簿順位と惜敗率による当落

比例代表は、全国を11ブロックで分けています。

北海道、東北、北関東、南関東、東京、北陸信越、東海、近畿、中国、四国、九州ブロックです。

定員は、最小が四国ブロックの4人で、最大が近畿ブロックの28人になります。(2021年9月現在)

比例代表では投票用紙に政党名を書きますが、各ブロックごとで集計された投票数は、ドント方式でブロックごとの各政党定員が決まります。(ドント方式については⇒『総裁選仕組み』)

では、具体的な事例で確認してみましょう。

惜敗率の党内対決

下の画像は、立憲民主党の2017年比例代表東京ブロックの当選者です。

東京ブロックは定数17人で、立憲民主党の獲得議席は4人でした。 

ご覧のように名簿順位1位は全員、小選挙区に立候補した人達です。惜敗率の高い順で、当選していることがわかります。

当選した山花議員と落選した松尾氏の惜敗率差は、わずか1.7%でした。

名簿順位至上主義

このケースとは別に、最初から党で名簿順位をつけてしまう場合もあります。

公明党の2017年比例代表東京ブロックの当選者です。

公明党は、ある程度の票読みができることもあり、小選挙区で出馬して落選することがほとんどありませんので、小選挙区と比例代表での重複立候補をさせていません。

例外的に2009年の衆院選では、当時公明党代表を務めていた太田昭宏議員が東京12区で落選してしまいました。

惜敗率完全無視

重複立候補しようがしまいが、惜敗率を完全無視されてしまっているのが、共産党の2017年比例代表東京ブロックの候補者です。

小選挙区の候補者が横一線の順位ではなく、最初から順位が決まっています。

惜敗率では池内沙織氏の方が宮本徹議員を上回っていますが、名簿順位が2位の宮本徹議員が当選ということになりました。

投票率によって多少の前後はあるにせよ、共産党が東京ブロックで獲得できる議席は2議席とほぼ分かっています。

宮本徹議員には当選が約束され、池内沙織氏には「自分で勝ち上がってこい」(もしくは運良ければ議席獲得3で当選)と言っているのと同じことです。

名簿順位優遇措置

別の順位の付け方をしているケースがこちらです。

小選挙区に出馬していない比例代表単独の候補者を上位の順位にすえ、小選挙区との重複候補者は順位が3位で並んでいます。

この優遇措置には、もちろん理由があります。

福井照議員はもともと高知1区から、福山守議員は徳島1区から、それぞれ選出されていた衆議院議員でした。

ところが高知県と徳島県は、2014年の選挙区の区割り改定で定数削減の対象になったのです。

それぞれの自民党県連の区割り調整により、福井照議員と福山守議員は小選挙区で出馬せず、四国ブロックの比例代表にまわることになりました。

そのため二人とも、順位を上位2位に確保させてもらっているのです。

  『参議院は必要か?存在意義について考えてみた

比例復活の制限

自民党では昨年、小選挙区で敗れ比例代表で当選した議員に対して、厳しい方針を出しました。

【西日本新聞 2020.12.27】
来年行われる次期衆院選を巡り、自民党が比例代表との重複立候補の条件に厳しい方針を打ち出している。

小選挙区で連続2回以上敗れ、比例代表で復活した議員の重複は原則認めない方向。
さらには、公認時に73歳未満でなければ比例名簿に登載されない「73歳定年制」も厳格に適用する。

たたき上げの菅義偉首相の強い意向を受け、対象議員にハッパを掛ける狙いがある。
「比例復活の議員ほど地元を回らず、たるんでいる。甘えは許されない」。自民選対幹部は方針の意図をそう解説する。

今回の衆院選で、どこまで厳正に適用されるかわかりませんが、対象となる候補者にとっては厳しい選挙戦になります。

【関連記事】⇒『国会議員の定数削減に問題やデメリットはないのか

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