死刑制度について賛成の理由や反対意見を調べてみる 世界の現状も確認

死刑制度刑務所 法律・行政関連

オウム真理教の麻原被告を含む7名の死刑執行が、2018年7月におこなわれました。

1995年の地下鉄サリン事件から23年、麻原被告の死刑確定からおよそ12年での執行でした。

2019年4月30日には、今上陛下の譲位がなされます。

そのこともあり、このオウム事件を平成のうちに完結させておきたいという、政府の思いがあると主張する人もいます。

たぶん、その通りなのでしょう。

この死刑執行に対しては、国内外で様々な意見があります。

死刑制度に対する世界の現状と、国内の賛否両論について確認してみます。

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死刑制度・日本の現状

日本の刑法には、日本で罪を犯した者に対しての刑罰として、『死刑』が記されています。

刑法(刑の種類) 第9条

死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。

更にその方法は、『絞首』にておこなわれると書かれています。

刑法 第11条

死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する。

最高裁判所で死刑判決を受けた被告人は、基本的には6ヵ月以内に死刑執行されることになっています。

刑事訴訟法 第475条
一、死刑の執行は、法務大臣の命令による。
二、前項の命令は、判決確定の日から6箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であった者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。

ところが現状では、6ヵ月以内に死刑執行されることはまずありません。 2000年以降でみてみると、最も短い人で判決確定から1年でした。

昨年2017年に死刑執行された死刑囚は、4人です。

年次ごとの死刑執行の推移は、以下の表で確認して下さい。

   『保釈金はいつ戻ってくるのでしょうか?

死刑制度に賛成

死刑制度に対する賛成意見をみてみます。

内閣府が死刑制度についておこなった世論調査があります。

その設問では、『「死刑は廃止すべきである」・「死刑もやむを得ない」という意見があるが、どちらの意見に賛成か』と聞いています。

結果は、「死刑は廃止すべきである」と答えた人の割合が9.7%で、「死刑もやむを得ない」と答えた人の割合が何と80.3%もいました。

残りの9.9%が「わからない・一概にいえない」と回答した人でした。死刑制度に対する意識(平成26年度)

『すべき』と『やむを得ない』を選択させる聞き方には問題がありますが、被害者やその親族のことを考えると、加害者を死刑にするのもやむをえないとする日本人の割合が、圧倒的に多いという結果でした。

   『恩赦はなぜ必要か?

死刑制度に反対

では逆に、死刑制度への反対は、どんな意見なのでしょう。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、「死刑は究極の人権の否定である」とまで言っています。

以下、アムネスティ・インターナショナルHPでの主張の抜粋です。

アムネスティ・インターナショナルが「死刑」に反対するのは、「死刑」という刑罰が、この「生きる権利」を侵害するものであり、残虐かつ非人道的で品位を傷つける刑罰であると考えるからです。

言うまでもなく、犯罪を処罰することを否定しているわけではありません。 しかし、命を奪うことは、たとえ国家の名の下であっても、正義にはなりません。 人為的に生命を奪う権利は、何人にも、どのような理由によってもありえないのです。

その他の考えを、インターネット上から拾ってみます。

「抑止効果がないんだから、やめちゃったら」という考えです。

冤罪とは、「無実であるのに犯罪者として扱われてしまうこと」をいいます。

裁判を経たとはいえ、冤罪の可能性が『0』ではないから、死刑執行してしまったら取り返しがつかないという考えです。

首にロープを巻きつけられた死刑囚は、立っている床が開いて落下することで死刑執行をされますが、そのボタンを押すのは、刑務官の仕事です。

彼の意見は、その刑務官の精神的負担のことを言っています。

 

死刑制度・世界の現状

先ほど見たように、日本ではまだ死刑制度に対する賛成(というより容認)意見の方が、圧倒的に多いのですが、世界の国々ではどのような状況になっているのでしょうか?

【毎日新聞 2018.7.7】

国際人権団体(こくさいじんけんだんたい)アムネスティ・インターナショナルによると、2017年末現在、106カ国がすべての犯罪で、7カ国が一部の例外的犯罪を除いて死刑を廃止しています。

また、死刑制度はあるものの過去10年間執行がない国も29カ国あり、こうした事実上の廃止も含めると、死刑がない国は計142カ国です。一方、死刑制度を維持しているのは日本を含む56カ国です。

記事にあるように、およそ3:1の割合で、実質的に死刑を廃止している国の方が多くなっています。
死刑制度を維持している56カ国にはどんな国々が含まれているのでしょう。

 

 

“ 一党独裁の国 ” 中国と “ 自由の国 ” 米国が、共に死刑制度維持国というのが、興味深いところです。

他には、中東のイスラム教国家イランやイラクが、死刑制度を続けている国になります。

そういった国がある一方、特にヨーロッパの国々では、早い時期から死刑制度を廃止しています。

EUは死刑制度に対して厳しい対応をしており、今回の日本の死刑執行について、EUとして共同声明を発表しました。

【毎日新聞 2018.7.6】
欧州連合(EU)の駐日代表部は6日、加盟国の駐日大使らと連名で、日本政府に執行停止の導入を訴える共同声明を発表した。

死刑には「犯罪抑止効果がない」と指摘し、冤罪(えんざい)による過誤も「不可逆」だとして「いかなる状況下での極刑の執行にも強く明白に反対する」と主張。日本政府に死刑廃止を前提とした執行停止の導入を訴えた。

アムネスティの「死刑は究極の人権の否定」という言葉には、とても考えさせられます。

死刑になるような人物は、ほとんどが複数の人の生命を奪ってきた人です。 まさに「究極の人権否定実行者」といえます。

アムネスティの言葉は、「だからと言って国家権力がその人物の生命を奪ってよいことにはならない」ということです。

   『少年犯罪は凶悪化しているのか?

 

『命を絶つこと』について

ハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」は、多くの人が知る言葉です。(解釈には色々あるようですが)

昔であれば、「死には死を」が当たり前であり、抑止という観点から見せしめのために、残虐な方法で執行されていた時代もありました。

イギリス、ドイツやフランスでは、1900年代半ば以降に、死刑を廃止しています。

主な理由は、『誤判の可能性』や『死刑による抑止力の欠如』があげられています

加害者の生命を絶って(死刑)しまえば、反省や悔い改めの機会をなくしてしまうという考えもあるようです。

この考えに対して、「死刑絶対肯定論」を書いた美達大和氏は否定的な意見を述べています。

美達大和氏は、2件の殺人事件で無期懲役となり、その後、自ら仮釈放を放棄して、無期懲役囚として刑にに服している人物です。

美達大和氏が著書でいうには、罪を反省する受刑者(凶悪犯)は、全体の1~2%程度だというのです。

それ以外の大半の受刑者は、「自分は運が悪かったんだ」とか、「被害者が抵抗しなければ殺さずにすんだ」とか、あたかも周りが悪かったような考えを持っているといいます。

こんな話を聞くと、「やっぱり死刑は必要」と思ってしまいます。

理想としては、国家権力による強制は、ない方が良いに決まっています。

しかし、秩序を保つことができないようであれば、何かしらの強制が必要になってきます。

それが死刑なのか、終身刑なのか、議論が分かれるところではないでしょうか。

個人的にはまだ結論にいたっていませんが、死刑は廃止して、終身刑を設けるのが良いのではないかと考えます。

その際の終身刑囚の処遇をどうするかです。

殊更、人権を強調する考えにはくみしませんので、質素倹約の最低限の生活を徹底させます。

人間として更生するプログラムを課し続け、肉体的奉仕と懺悔の日々で一生おくる環境に身をおかせます。

こういう機会に、死刑制度に対して、それぞれが考えをめぐらすことが必要ではないでしょうか。


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コメント

  1. YON2 より:

    「死刑には犯罪抑止効果がない」という意見ですが、そのようなことはないと思う。
    「だからといって、国家権力が犯罪者の生命を奪っても良いことにはならない」という意見。では被害者遺族が犯人の命を奪っても良いのか・・・それも許されないでしょう。やはり厳格な法律判断の下、責任を持って執行すべきと思う。

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