女優の沢尻エリカさんが、2019年11月に麻薬取締法違反の疑いで逮捕され、その後起訴されました。
今年の2月には、懲役1年6ヵ月、執行猶予3年の判決がいいわたされています。
判決がでた当日、沢尻エリカさんは直筆で、謝罪としてのコメントを発表しました。
「この度は、私の身勝手な行動により多くの人を裏切り、傷つけてしまい、社会的に測り知れないご迷惑をお掛けしてしまいましたことを心から深くお詫び申し上げます。
謝って許されることではありませんが、犯した罪の重さを自覚し反省していき、全力で更生に向けて努力することが自分のできる唯一の償いと考えております。」
この文章には、“反省”や“更正”という言葉が出てきます。

芸能人の薬物使用や不倫問題などが度々世間を賑わし、そのたびに当の芸能人が、謝罪し反省していることを述べます。
またかと思うと同時に、果たしてこの人達は、誰に謝罪し、本当に反省しているのかと思ったりしませんか。
今回、“反省する” ことについて、考えてみたいと思います。
「反省させると犯罪者になります」

意識して手に取ったわけではありませんが、たまたま今読んでいる本が、とても興味深い内容でした。
今回の沢尻エリカさんの更正問題や、芸能人が起こした問題に対して世間の圧力で謝罪したとしても、はたしてそれは本当に当人が“反省しているのか”ということと、リンクする内容でしたので紹介します。
先に結論だけを言えば、周りの環境や圧力で人を反省させても、何の解決にもならないということです。
【反省させると犯罪者になります】著者:岡本茂樹

題名を見て、「えっ、どういうこと?」と疑問がわきます。
『まえがき』の冒頭部分を読んで、「悪いことして、反省させないって、変でしょ!」と、反発心がわきます。
奇をてらってつけた題名なの?
「私は独自の観点から物事を見てます」的な、独善的な中身のうすい内容の本か?
しかし読み進めるうちに、岡本茂樹氏の言いたいことが、理解できるようになります。
人を無理に反省させようと追い込んでも、決して人は反省などしないということを。
著者の経歴をみてみましょう。
中学・高校の教員をつとめた後、武庫川女子大学大学院臨床教育学研究科博士課程を修了し、この本を書いた時には、立命館大学で教授をしていました。
そのかたわら、刑務所で同じ過ちを繰り返す受刑者の更正支援も行っています。民間のボランティアで受刑者の支援をする篤志面接委員という肩書きです。
刑務所内では、更生教育が行われますが、基本的には罪を犯したことを反省させ、社会に復帰させることを目的に行われます。
しかし、そのやり方によっては、受刑者は反省などしないというのです。

岡本茂樹氏いわく、「反省を迫った結果は、反省する態度がうまくなるだけにすぎません」となってしまいます。
犯罪者の言い分

岡本茂樹氏の書いていることを証明するような、別な人物の本があります。

『死刑絶対肯定論』を書いた無期懲役囚の見達大和氏は、その著書の中で、凶悪犯罪を犯した懲役囚のほとんどが反省していないと言いきっています。
強盗殺人を犯した者の言い分は、「(被害者が)突然帰ってこなければ、殺さずにすんだ」というあまりにも身勝手なものです。
それでも刑期が満了すれば、そういった人達も出所していきます。
正に、反省したふりの数十年をすごし、何も変わらないまま社会復帰をはたすわけです。もちろん、全員がそうというわけではないでしょうが。
その犯罪行為にいたった受刑者が、自身の不満や怒りをそのままに、反省の態度で誤魔化しても、結局その根の部分が残る限り、もっと大きな問題を起こす可能性があるといいます。
せっかく社会復帰しても、また罪を犯し刑務所に逆戻りするのは、そこに原因があります。
また、「自分が弱かった」「自分が甘かった」という反省でも、問題解決につながりません。
内面と向き合うところから始めていないからです。
岡本茂樹氏はこう表現しています。
「受刑者は『反省していない』のではなく、誰にも本当の気持ちを語っていないから、『反省できない』のです」
反省させずに心の声を聴く

では具体的にはどうすればいいのでしょうか?
「反省させない方法が、本当の反省をもたらすのです」と岡本茂樹氏は言います。
罪を犯した者の本当の声(本音)を、まず聞いてあげることができないと、反省にはいたりません。
具体的には、以下のような流れが理想です。
- 過去に起きた事実の確認
- 心の奥底にある否定的感情の確認
- 否定的感情の吐き出し
- 自己理解(気づき)と心の変容
- 被害者に対する罪の意識の芽生えと深まり
それは手紙という形が有効です。手紙を正直に書くことで、過去の否定的感情を吐き出すのです。
その怒りや恨みと向きあう事で、はじめて次の感情が生まれてきます。
更に、幼少期の家庭環境や教育、人間関係までさかのぼって、なぜそういう思考になるのか見つめることで、根本的な問題解決につながっていくといいます。
こういう過程をへずに、反省を表明しても、世間や相手(被害者)に対して、更には自分自身に対しても、反省した気になっているだけという可能性が大というのです。
それを考えると、沢尻エリカさんは人をあやめたわけではありませんが、現在“反省”していると言っているのは、まだ、“後悔”というレベルなのかもしれません。
岡本茂樹氏のような人が、沢尻エリカさんの更生に手助けしてくれないものかと思いつつ、Wikipediaで調べてみると、2015年6月28日に亡くなっていると書かれています。
京都新聞によると、脳腫瘍のため自宅で死去ということです。 56歳という若さです。
他人事ながら、ちょっと力が抜けました。
法廷で沢尻エリカさんは、19歳から薬物を使用していたと話しています。
逮捕時の年齢が33歳ですから、およそ15年にわたって、薬物に依存してきたことになります。薬物依存から抜け出すのは、簡単なことではないでしょう。
沢尻エリカさんの場合、親族に母親と兄がいます。
法廷での証人尋問で、兄は沢尻エリカさんと「今後は同居して、更生に向けて支援していく」と話していました。
ただ、FLASH記者のインタビューには、「結婚しているので同居はわかりません」と応えています。
インタビュー記事が間違っているのか、その気がないのに、判決を有利にするために「同居する」と言ったのかわかりませんが、ちょっとした心配要素ではあります。
いづれにしても、家族のサポートなくしては、更正は難しいでしょう。
沢尻エリカさんには、幼少期・青少年期の自分をかえりみながら、表面的ではない本当の意味での反省をして、悪い人脈を絶ち切り、更生していってほしいと思います。
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