終末期医療のあり方や問題点を考えさせられる書籍 寝たきり老人として生きる意味

寝たきり老人1 社会問題(課題)

「人は、何のために生まれるのか?」
「死んだらどうなるの?」

人間にとって、永遠のテーマともいえる問題です。


日本人の平均寿命は、男性81.25歳、女性87.32歳で世界最高水準です。(2018年末現在)

私だけではないと思いますが、日本の平均寿命を基準に何の根拠もなく、「だいたい80歳くらいまでは生きられるだろう」という思いが、誰にでもあるのではないでしょうか。

しかしテレビで、30代のアナウンサーや50代の元ラグビー選手が癌で亡くなったというニュースに触れれば、あらためて“明日は我が身”という考えにいたります。


先日、友人との会話で、死について考えさせられました。

友人の50代後半の 会社の 先輩が、数ヶ月前に突然の脳出血で亡くなりました。週末、「また来週と」と別れて、2日後のことだったそうです。

日ごろからなんの問題もなく、元気に過ごしていた人です。

そんなこともあって、以下の書籍を読む機会がありました。

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終末期医療につての書籍

本当に、読んで良かったと思う書籍です。

副題に、『自分で決める人生最後の医療』とあります。

寝たきりで、意識がなくなるような状態になってからでは、自分で希望の医療方針を決めることはできなくなります。

だからこそ、それ以前から、老後の死について考える必要性があります。

著者の宮本夫妻はともに内科医で、夫の顕二氏が肺の病気、妻の礼子氏は認知症の専門医です。


宮本夫妻が終末期医療のことを深く考えるようになったのは、2006年、認知症の専門病院『きのこエスポアール病院』の藤沢嘉勝医師の講演を聞いたことからでした。

その翌年2007年に、スウェーデンの認知症専門医のタークマン医師を訪ねます。

タークマン医師の案内で、病院や老人介護施設を見学した際、そこに寝たきり老人は一人もいませんでした。

それは、なぜか?

寝たきりになる前に、亡くなっていたからです。

もちろん亡くなる前の数週間は寝たきりになりますが、チューブから栄養をうけ、手足の関節が固まり寝返りも打てず、一言も話さないで何年もたつという意味での寝たきり老人がいないということです。

寝たきり老人の現状

日本の寝たきり老人の現状を調べてみましたが、具体的な数字はわかりませんでした。

ですが、宮本医師らが問題提起しているということは、欧米にはいない、動けずしゃべらず意思を表すことができない状態で、生かされている寝たきり老人が日本に多くいるということでしょう。


日本には、介護保険制度があり、保険適用されるためには要介護認定されなければなりません。
もっとも重度な状態の場合は、『要介護5』と認定されます。

以下、おおまかな認定者数の推移を示したグラフです。


要介護5に認定された人は、およそ60万人です。その基準となるのは、こちらです。


この内のどれくらいの割合の人が、意識がほとんどない寝たきり状態なのかはわかりません。

日本ではスウェーデンのように、延命措置を行わないで看取りをする病院が、とても少ないそうです。逆をいえば、多くの病院が延命措置を行っているということです。

終末医療に対する調査

厚生労働省では、「人生の最終段階における医療に関する意識調査」を近年5年ごとに行っています。
直近の調査は、2017年12月におこなわれました。

  【人生の最終段階における医療に関する意識調査


この調査は、全国の一般国民・医師・看護職員・介護職員等を対象に実施され、郵送にて行われた意識調査です。

この中の項目で、自分が終末期をむかえている段階で、どのような治療を望むか質問しています。

例えば、『末期がんで、食事や呼吸が不自由であるが、痛みはなく、意識や判断力は健康なとき』で、『口から水が飲めなくなった場合の点滴』に対しては、50%前後の人が、一般国民・医師にかかわらず“望む”と回答しています。

その反面、“望まない”と回答している人も一般国民で30%弱、看護・介護職員では、35%強の人がそう回答しています。

末期がんで、水さえ口にできないような状態であれば、延命治療しなくてよいということのようです。

私も個人的には、その考えに同意します。


続いて『口から十分な栄養がとれなくなった場合の中心静脈栄養』(首などから太い血管に栄養剤を点滴すること)には、70%をこす医療関係者が、望まないと答えています。(一般国民57.5%)

介護職員にいたっては、80.6%の人が“望まない”と回答しています。

末期がんの衰弱しきった患者を世話してきた、介護職員であればこその回答ということなのでしょう。

更に、鼻からの流動食を入れることや、胃ろう(胃に穴を開け管を取り付ける)で流動食を入れることについては、80~90%近い医療関係者が、“望まない”と答えています。(一般国民65~70%)

この調査でもわかるように、延命処置を希望する人は、少数派です。

特に医療関係者は、現場を間近に見てきた結果、一般の国民よりも延命治療を希望していません。

にもかかわらず、なぜ多くの病院が延命措置を行うのでしょうか?

延命治療が行われる理由

宮本医師によるとそれは、以下の理由からだそうです。

<希望しない延命が行われる五つの理由>
○我が国にある延命至上主義
○自分はどのように死んでいきたいかを家族に伝えていないから
○診療報酬や年金などの社会制度の問題
○医師が遺族から延命措置を怠ったと、訴訟を起こされる危険性があること
○倫理観の欠如

著書『欧米に寝たきり老人はいない』より引用

最後の“倫理観の欠如”について、宮本医師は、スウェーデン、オーストラリア、スペイン、オーストリア、オランダ、アメリカ、6カ国を見てきた中で、こう述べています。

「その根底にあるのは、人は必ず死ぬものであり、その人の尊厳を損なってまで延命を図ることは、倫理的に許されないという考え方」

著書『欧米に寝たきり老人はいない』より引用

日本では、自分がされたくない延命治療が、行われています。

延命治療と法律

現在、リビング・ウィル(終末期に受ける医療について、自分の希望を書いたもの)や、事前指示書(リビングウィルに医療代理人の氏名と署名が加わったもの)というものが存在しますが、まだ法的な拘束力はありません。

例えば、死亡後の臓器提供であれば、1997年に施行された臓器移植法(通称)によって、故人の生前の臓器移植希望が叶うようになりました。

同様に、延命治療に関しても法律ができることで、当事者の希望が叶い、立法過程の問題提起で日本人の意識も変わる可能性があります。

実際、公益財団法人・日本尊厳死協会では、終末期医療にたいする法制化を働きかけ、超党派の議員連盟や与党・自民党の「尊厳死に関する検討プロジェクトチーム」に対して、提言・要望活動をおこなっています。


宮本医師が序章で、「国民一人ひとりが、自分はどのように生きて、どのように死を迎えたいのかを考えないことには、この問題は解決しません」と述べています。

いくつかの課題はあったとしても、それを変えていくのは、まず私の意識からかもしれません。


最後に、書籍の中で印象的なメールが紹介されていたので記します。

92歳Aさんの娘さんは、「日ごろ母は、“ 延命措置はしないでちょうだい。迷ったら、あなたがしてほしくないことは、私にもしないで ”と言っていました」と伝えてくれました。

高齢者の終末期医療を考える上で、『あなたがしてほしくないことは、私にもしないで 』の言葉は、とても意味のある言葉です。

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